ホタルの光に人を集めたかった――A-Connection最初の大仕事 DECKY ARCHIVE 第30話
A-Connectionが動き始めた頃、僕の中には最初からひとつの思いがあった。
八重谷の自然を生かして、何かできやんやろか。
それは、ただイベントをしたいというだけではなかった。
子どもたちが自然の中へ入って遊べるような、そんな場所として、八重谷にはずっと可能性があると思っていた。
あそこには湧水がある。
谷がある。
水があって、木があって、昔から自然の豊かな場所だった。
僕にとっては、ただの山や谷ではなかった。
八重谷には、父と母が「あじさいの道」で動いていた思い出も重なっていた。
父や母たちは、あじさいを植えて、あじさいの道を作ろうとしていた。
仲間と一緒に手をかけて、そこへ人が来てくれるように動いていた。
けれど、せっかく植えたあじさいは、鹿に食べられてしまった。
被害は何度もあって、最後には全部掘ってしまった。
あじさいの道には、一本も残らなくなった。
だから僕の中には、
あの場所をこのままで終わらせたくない
という気持ちが、どこかにあったのだと思う。

八重谷で何かしよう。
A-Connectionの仲間とそんな話をしながら、何ができるかを考え始めた。
そこで目をつけたのが、ホタルだった。
八重谷の谷には、昔からホタルがよく飛んでいた。
それは僕らが子どもの頃から知っていたことで、特別に作られたものではなく、もともとそこにある自然だった。
それなら、このホタルを生かして何かできやんやろか。
ホタルが増えたら、人が見に来るんじゃないか。
そんなことをA-Connectionで考え始めた。
大きな観光事業みたいな話ではない。
もっと素朴な発想だった。
でも、地域を面白くしたいと思う時、最初はそんな素朴な思いつきから始まるものだった。

ホタルを増やしたいと思って、いろいろな人に話を聞いた。
その中で出てきたのが、ホタルの幼虫の餌になるカワニナの話だった。
八重谷にはもともとカワニナもおる。
それでも、
カワニナがもっと増えたら、ホタルももっと増えるんじゃないか。
そんなふうに考えた。
今振り返れば、だいぶ単純な考えやったかもしれん。
でも、その時は本気だった。
キャベツがええとか、いろんな話も出た。
そんな中で、活動しとるおじさんに聞いたら、
EM菌がええよ
と教えてもらった。
それで僕らは、少しでも環境が良くなればという思いで、EM菌を年に二、三回ほど谷へまいた。
A-Connectionとしてできることを、手探りでやってみたわけやな。
カレンダーに残っとる「餌やり」というのも、そんな流れの中の活動だった。

ホタル祭りの会場に選んだのは、あじさいの道の奥ではなかった。
今でいうカプリッチョの場所、阿曽温泉の入り口のあたりだった。
そこなら集まりやすいし、仲間や家族にも分かりやすい。
祭りの会場としては、ちょうどよかった。
最初に言い出したのは、もちろん僕だった。
何かやろうと言い出すのは、たいてい僕だったからな。
段取りも、準備も、だいたいのことは自分で気にしていた。
EM菌のこともそうやし、全体をどうするかも考えとった。
といっても、大きなイベントではなかった。
本格的な観光祭りというより、仲間と作る手作りの夜店みたいな感じだったと思う。
音楽も鳴らした。
出店も少しした。
来てくれたのは、A-Connectionの仲間や、その家族、子どもたち、声をかけた知り合いの人たちだった。
知らん人が大勢来るような祭りではなかったけれど、それでよかった。
最初から、まずは自分たちで楽しめるものを作りたかったのだと思う。

当日は、雨で水が増えたらどうしよう、という心配も少しはあった。
自然相手やもんで、そこは考える。
けれど、苦労したかと言われると、正直、あまりそういうふうには思っていない。
その時その時では大変やなとは思うけど、僕はもともと、楽しければええやんと思う方だった。
何より印象に残っているのは、子どもたちが楽しそうにしていたことだった。
仲間の子どもたちが会場で遊んで、にぎやかにして、夜店みたいな空気を楽しんでいた。
そういう光景を見ると、やってよかったなと思える。
そして暗くなると、ホタルはちゃんと飛んだ。
八重谷の谷は、昔からホタルがよく飛ぶ場所だった。
その日も、しっかり飛んでくれた。
みんなでその光を見ながら、
ああ、やってよかったな、と思えた。

今でも、キャンプに来た人がホタルを見に行くことがある。
わざわざあの谷まで見に行く人もいる。
それだけ、八重谷のホタルは魅力があるのだと思う。
2017年のホタル祭りは、たくさんの人を集めた大イベントではなかった。
けれど、A-Connectionとして動き始めた僕たちにとっては、最初の大仕事だった。
そして僕にとっては、もうひとつ意味があった。
父や母たちが、あじさいで人を集めようとした場所。
その思いを、今度は僕らが、ホタルの光でつなごうとした。
なくなってしまったあじさいの道の先に、
まだ人が集まれる理由を作りたかった。
あの夜、八重谷に飛んでいたホタルの光は、
ただきれいやっただけやなく、
そんな思いまで照らしてくれていたような気がする。
