「雑草という名の草はない」という名言が、今ひとつ使いづらい。
「雑草という名の草はない」
という言葉は不思議だ。
誰もがこれを、昔から何となく『名言』だと思ってるのだが、
使い道があまりない。
植物学者である牧野富太郎や、生物学者の昭和天皇の台詞としてリスペクトされるのは分かるのだが…
*
【ケース①】
「いや〜…本当に雑草ってうざいっすよね〜…まあ、よくもこれだけ次から次へと…」
「まあ、そういうなって…雑草という名の草はないんだから…」
「え?それって当たり前じゃないですか?」
「いや、だから、命に敬意を持ってだな…」
「一緒に、刈りまくってる最中ですよ?」
このように、まず雑草の最前線では使えない。
**
【ケース②】
「いや〜…もう雑用ばかりで嫌になりますよ…僕はね、早く現場でバリバリに営業がしたいんですよ!」
「お前さ…雑用だって立派な仕事だろ?雑草という名の草はないんだから…」
「え?確かに資料集めとか、基礎調査とか、それぞれ名前がありますけど…」
「そう。だから一つ一つの仕事を大切に…」
「つまり、雑草程度の仕事なんですね…」
このように、仕事の比喩でも使いにくい。
***
【ケース③】
「いや、僕なんてつまらない人間ですよ…なんの取り柄もないというか…」
「お前さ…そういうけど、雑草という名の草はないんだぞ?誰にだって個性というものがある」
「はい…確かによく見れば、その辺の雑草にも違いがある…」
「そう、だからお前は雑草のように…」
「市場価値がないんでしょう?…」
個性云々も、所詮は雑草だから響かない。
****
【ケース④】
「やっぱり、僕には雑草並みに市場価値がないんですよ!」
「いや…くどいようだが、雑草という名の草はないぞ?それは、人間がつけるラベリングに過ぎない」
「つまり、それは人間からみた一方的な名前だと…」
「その通り。つまり雑草という名の草はないが、薬草という草も香草という草も牧草という草もない。所詮は人間の都合なのだから…」
「その人間の都合とは…」
「区別だよ」
なるほど…
名付けの本質たる『区別』について再考する際、この言葉は金言となりそうだ。
*****
【ケース④-2】
「ちょっと待ってください…雑草も薬草も、人間が区別のためにつけた単なるラベリングだとしたら…」
「その通り。区別する必要がなければ、ラベリングなど必要ない。そもそも君は、草はおろか日常で植物を区別する必要などないだろう?」
「ということは…」
「草という名の植物はない」
うん、
やっぱり使いづらい。
─── ─── ─── ─── ───
↓↓↓
言葉もなんでも、解像度は高い方がいい。
いいなと思ったら応援しよう!
気に入っていただけた方は、応援お願いします!