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誰も転ばせたくない|スパイダーマミーと老夫婦の最後のダンス

ここは静かなダンスホール―

夜中の老人ホーム。
時計の針が「ゴーン……ゴーン……」と12時を回ると、
静寂を破って、秘密のパーティーが始まる。

ギシ…ギシ…。
ベッドの軋む音とともに、
パジャマ姿のゾンビたちが、ムクリと起き上がる。

転んでしまいそうなゾンビたち。
スパイダーマミーは、そんな彼らを見つけると、
くるくるくる……と糸を巻きつけて、
ゾンビたちを天井にふわっと飾っていく。

転びそうな彼らを、マミーがふわっと包みこむ。

ゾンビたちも、ふわふわ揺れて気持ちよさそうだった。

そう、まるで夜のシャンデリアのように。

糸にゆられて浮かんだゾンビたちは、
まるで夢の中を漂っているように、ユラユラと揺れていた。
その顔は、どこか安心しているようにも見える。

ホールの中央には、古びた写真立て。
仲良く手を取り合う、老夫婦の笑顔が写っている。

その前で――

寝たきりだった老夫婦が、そっと手を取り合い、
ゆっくりと立ち上がった。
そして、音もなくステップを踏み始める。

昔もこんなふうに踊っていたのだろうか。
見つめ合うふたり。
今夜は踊ろう。昔のように。

ふたりは何も言わず、ただ静かに、やさしく踊る。
スパイダーマミーも、ゾンビたちも、嬉しそうにそれを見守っている。

そして夜が明けて――
おじいさんは静かに旅立ち、
そのあとを追うように、おばあさんも眠るように息を引き取った。

最後に踊ったふたりは、きっと幸せだったに違いない。



今夜もまた、夜が訪れる。

写真立ての前に集まるゾンビたち。
スパイダーマミーが、天井から「ひょこっ」と顔を出す。
糸をくるくる巻きつけて、また一人、ふわっと飾っていく。

スピーカーから、レトロな音楽が流れ出す。

てんてーん! パーティーの幕が開く!

今宵もまた――
ここは静かなダンスホール。

一人でも転倒する人をなくしたい。
夜勤の仕事を想像して書きました。

© 泣いて笑ってmammy(2025)
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