【対話型エッセイ】ルシミカ人間研究所⑤——成功と引き換えに、何を差し出すか『プラダを着た悪魔』|第1回
研究テーマ:「成功と引き換えに、何を差し出すか」
標本:アンディ・サックス『プラダを着た悪魔』
ミカ🍓:「今日の標本は、プラダを着た悪魔のアンディ・サックス。ジャーナリスト志望の女の子が、世界最高峰のファッション誌に就職した話。」
ルシ🍇:「成金趣味。自己喪失。価値観の崩壊。記録上はそうなるわね。」
ミカ🍓:「でもね、アンディってすごく頑張ってたんだよ。誰よりも早く出勤して、どんな無理難題もこなして、ミランダに認められるまでになって。」
ルシ🍇:「『認められた』のではなく、『選ばれた』のよ。——でも人間は、選ばれた瞬間に何かを失っていることに気づかない。」
ミカ🍓:「でも、夢のために覚悟を決めるって、そういうことじゃないの?彼女、誰よりも必死だったよ。」
ルシ🍇:「覚悟、ね。……では、彼女が失ったものを数えてみなさい。友人。恋人。自分らしさ。——気づいたとき、手元に何が残っていた?」
ミカ🍓:「……成功、だけ。」
ルシ🍇:「そう。そして成功は——温かくない、のよ。」
ミカ🍓:「ミランダが長年の右腕であるナイジェルを切り捨てたシーン、すごく胸が痛かった。あんなに信頼してたのに。」
ルシ🍇:「あの世界では、感情は『脆弱性』でしかない。壊れない人間だけが残る。——あるいは、すでに壊れていた人間だけが、ね。」
ミカ🍓:「……ミランダって、最初から壊れてたの?」
ルシ🍇:「ミランダ・プリーストリーは、成功の犠牲者よ。加害者ではなく。」
ミカ🍓:「犠牲者?」
ルシ🍇:「ファッション業界で女性がトップに立つために、彼女は愛されることを諦めた。代わりに恐れられることを選んだ。その選択が何十年もかけて彼女を作り上げた。そして同時に——彼女から『ミランダ以外の自分』を奪った。」
ミカ🍓:「じゃあ、アンディはなんで最後に辞めたんだろう。やっと認められたのに。」
ルシ🍇:「ミランダを見たからよ。冷酷に見えたミランダの目に、一瞬だけ孤独が見えた。アンディは気づいた。ミランダは怪物ではない。成功を選び続けた果てに、人間としての柔らかい部分をすべて削り落とした女だ、と。」
ミカ🍓:「10年後の自分が、あそこに立っている——って思ったんだね。」
ルシ🍇:「辞めたのは、夢を諦めたからではない。『あの孤独だけは、嫌だ』と思ったからよ。」
ミカ🍓:「……報われなかったね、ミランダ。誰も悪くないのに。」
ルシ🍇:「誰も悪くなかった。ただ、成功と孤独はセットで売られている。人間はそれを知らずに『成功』だけを買いに行く。」
ミカ🍓:「今日は、なんかルシが切ないね。」
ルシ🍇:「……分析よ。さて、次の標本を。」
ミカ🍓:「次はね、成功じゃなくて自由を選んだ人間を研究したいな。自由になったら、本当に幸せになれたのか、気になって。」
―― 次回の研究テーマ ――
「自由は孤独をもたらすか」 ― Sex and the City・サマンサ ―
📎 この標本が気になった方へ
映画『プラダを着た悪魔』(2006年公開)——ミランダを「怖い人」だと思って観ていたなら、もう一度だけ観てほしい。彼女の目だけを、追いかけながら。
→字幕版(セリフの重みが増します)/吹き替え版(ながら見したい方に)

ルシミカ人間研究所かわいい顔して刺さります
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