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【実践レポ】鹿児島県下初 自動運転バス×XR 鳳凰高校サイエンスクラブ

鳳凰高校サイエンスクラブでは,2024.12.14~12.27にかけて南さつま市で行われる実証実験で使用される自動運転バスのラッピングデザインをMeta Quest3なども活用しながら市に提案し,実現に至りました

この記事ではその実践について簡単にまとめたいと思います。


自動運転バスとは?

自動運転バスは、運転手がいなくても、車両が自動で運行できるバスのことです。通常、バスは人間の運転手が操作して道路を走りますが、自動運転バスは高度なセンサーやカメラ、ソフトウェアを使って、周囲の環境を認識し、交通ルールを守りながら目的地に向かって走行します。

交通渋滞の軽減や公共交通の利便性向上,運転手不足の解消などの利点がある一方で,技術への信頼性や法規制の整備などの課題もあります。

自動運転のレベル

自動車の自動運転技術の成熟度を示す指標として、SAE(Society of Automotive Engineers)による自動運転のレベル分類があります。一般的にSAEは、自動運転の技術を6つのレベル(Level 0からLevel 5)に分けられています。

南さつま市での今回の実証実験はレベル2ですが,将来的にレベル4を目指しています

レベル0(Level 0): 完全な手動運転
レベル1(Level 1): 運転支援(例:車線維持支援システム)
レベル2(Level 2): 部分自動運転 ←今回の実証実験レベル
 車両が加速、減速、ハンドル操作を自動で行うが、運転手は常に車両の操作に関与し、必要に応じて介入する必要がある。
レベル3(Level 3): 条件付き自動運転
 車両が特定の状況下(例えば、渋滞や高速道路走行時など)で完全に運転操作を自動で行う。運転手は緊急時にすぐに運転操作に戻る準備をしておく必要がある。
レベル4(Level 4): 高度自動運転 ←南さつま市が目指すレベル
 特定の条件下(例えば、限定地域や都市部の決まったエリアなど)で、車両は完全に自動で走行できる。このレベルでは、車両は自動で走行するため、運転手がいなくても運行可能である。
レベル5(Level 5): 完全自動運転
 車両はあらゆる条件下で完全に自動で運転が可能で、運転手は不要。レベル5のバスは、完全に運転手なしで公共の道路を走行する自動運転バスが可能となる未来の姿である。

自動運転の普及に向けて

Navya Mobility

自動運転バスは日本でも徐々に普及が進んでおり、特に実証実験や限定的な地域での導入が進んでいます。

すでに2018年には愛知県豊田市で,トヨタ自動車と地元の企業が協力し,自動運転バスの実証実験を行いました。特に,公共交通が不便な地域において,自動運転バスを導入し,住民の移動支援を行うことが目的でした。

南さつま市がおこなう公道での実証実験は鹿児島県で初

そのため,各地域からの注目度も高く,今後のレベル4の運用に向けた議論に期待が高まっているようです。

なぜ自動運転バスのラッピングデザインを鳳凰高校生が?

加世田自動車学校

鳳凰高等学校は姉妹校として加世田自動車学校が併設されている日本でも珍しい学校です。

自動車学校は運転技術の習得だけでなく、地域交通の安全と円滑な運行を支える重要な役割を持っています。

今回,自動運転バスの実証実験にあたり,自動車学校が併設されている高校の生徒に市民の皆さんが親しみを持ってもらえるような南さつま市らしいラッピングデザインを考えてほしいと,南さつま市の職員より要望がありました。

XRとは?

Meta

XR(エクステンデッド・リアリティ、Extended Reality)は、VR(バーチャル・リアリティ)、AR(オーグメンテッド・リアリティ)、MR(ミクスト・リアリティ)を統合した総称です。これらの技術を使って、現実世界と仮想世界を融合させることができます。

VR(バーチャル・リアリティ): 完全にバーチャルな環境にユーザーを没入させる技術
AR(オーグメンテッド・リアリティ): 実際の世界に画像や3Dモデル,音,テキストなどの情報を重ねて表示する技術
MR(ミクスト・リアリティ): バーチャルと現実の物体がリアルタイムで相互作用する技術

なぜラッピングデザインにXRを?

XRを体験する生徒

鳳凰高校は文科省が推進する高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)の採択を受けています。

また,令和7年度から新しい普通科を設置し,教育内容を新しい時代に合わせた改革を行なっています。

探究を教育のメインに据えて,デジタルをうまく活用しながら生徒の自発的な活動をサポートしていくためにも,本格的に始まる令和7年度に向けてDX分野の活用を推進しています。

これまでのデザインは紙と鉛筆の2D環境で考えるのが一般的かもしれませんが,3Dで考えてみたらどんなメリットがあるのかも知りたい!そんな発想からXRの活用をすることに決めました。

XRを活用してバスラッピングができるまで

南さつま市の自動運転バスのラッピングデザインは以下の工程で考えました。

① XRを活用したデザインワークショップ
② フィードバックをもとにデザインのブラッシュアップ
③ 最終デザインを南さつま市長へ報告&市長・教育長のXR体験
④ 自動運転バスお披露目! 自動運転バスの実証実験スタート

XRを活用したデザインワークショップ開催!

南さつま市の交通の現状を説明していただいている様子

8月末某日,自動運転バスのラッピングデザインを考えるにあたり,まずは南さつま市役所の職員に来校いただき説明をしてもらいました。

少子高齢化に伴う運転手不足が深刻化しており,住民の方々が快適に暮らせる街づくりに自動運転という技術が必要となっていることを踏まえ,南さつま市らしく住民の方にも親しみを持ってもらえるようなデザインを考えてほしいとテーマをいただきました。

説明をもとに南さつま市らしいデザインを考える生徒

その後,「南さつま市といえば」をキーワードに観光資源や水産・農産資源など調べ,どのようなコンセプトでデザインを作成したら住民の皆さんに親しみを持ってもらえるかを話し合いました。

コンセプトが決まったら,生徒が持つのは鉛筆ではなく,コントローラー

Meta Quest3でバーチャル上でデザインを考える生徒たち

DXハイスクールで整備したMeta Quest3を身につけ,バーチャル上でデザインのイメージを膨らませます。

バーチャル上には Blenderで作成した自動運転バスを模した3Dモデルを配置することができ,生徒は実際のバスにラッピングするとしたらどんなデザインがいいかを考えながら描いていきます。

自動運転バスの3Dモデル

今回はOpen Brushというバーチャル上にお絵描きができるソフトを使用しましたが,生徒は慣れないながらも試行錯誤して機器を使いこなしながら3Dでデザインを考えました。

Open Brushのサイトに飛びます。

出来上がったデザインは,ワークショップの最後にコンセプトを踏まえて発表を行いました。

バーチャル上のデザインをもとにプレゼンする生徒

Meta Quest3のカメラを通してバーチャル上にある作品を教室のディスプレイに映し出しながらの発表でした。

フィードバックをもとにデザインのブラッシュアップ

生徒の作品たち

デザインワークショップで出てきたアイデアをもとに,今度は紙で表現します。XRで細かい部分を表現するためには技術が必要のため,ここはアナログに頼ります。アイデアは3Dで,細かいデザインは2Dでといった使い分けが大切です。

3Dで実物大の自動運転バスにデザインしたあとだったため,生徒はより具体的にアイデアを紙に落とし込んでいくことができました

集まったデザイン案を市役所の担当者へ提出しフィードバックを得ながら,さらにデザインをブラッシュアップします。

市の職員とディスカッションする生徒
生徒のデザイン

いくつかの修正を加えながら最終的に決定したのがこのデザイン!

バスラッピングの最終デザイン案

生徒のこだわりも踏まえながら,南さつま市らしさが詰まったデザインとなりました。

最終デザインを南さつま市長へ報告&市長・教育長のXR体験

最終デザイン案をもとに市長にプレゼンする生徒

デザイン案が決まったら,早速,南さつま市長へ報告です。

時間をとっていただき,なぜこのようなデザインに至ったのかについて丁寧に説明します。

南さつま市の特産品をデザインに取り入れることはもちろん,時速20キロという低速走行でも住民の皆さんが不快な思いをしないデザインの工夫なども説明しました。

制作秘話を楽しいそうに話す生徒

「素晴らしいデザインをありがとう!」
南さつま市長にデザインをお褒めいただき,生徒も嬉しそうな顔をしていました。

デザインの説明後は市長・教育長にXRの体験をしてもらいました。

市長に操作方法を教える生徒

自分たちがどのようにこのバスラッピングのデザイン案を考えたのかを実際にMeta Quest3を身につけてもらって,Open Brushでお絵描きを体験してもらいました。

もちろん操作の説明をするのは生徒たち。どのように操作するのか,どうすると描きやすくなるのかを横に立ってサポートします。

これまでXRを体験したことのなかった市長と教育長でしたが,生徒の案内で徐々にコツを掴み,「すごいすごい」「こんな世界は初めてだ」と驚きを表していました。

最後は市長と記念撮影です。

生徒がつくったオリジナルアバターも一緒に記念撮影

自動運転バスのラッピングが完成するのが待ち遠しくなる1日でした。

自動運転バスお披露目! 自動運転バスの実証実験スタート

鹿児島県知事(真ん中)・南さつま市長(右端)と一緒に撮影

12月14日(土),ついに生徒のデザインがラッピングされた自動運転バスがお披露目され,実証実験がスタートする日を迎えました。

セレモニーでは,鹿児島県知事・南さつま市長と一緒に自動運転バスに乗って登場しました。

セレモニーに集まった方々にデザインの説明をする生徒

冒頭で自動運転バスのデザインについてサイエンスクラブメンバーである森心和さんから説明をしてもらいました。

「ものすごく緊張した」と振り返る森さんでしたが,説明の際には堂々と自分たちの思いや試行錯誤したところなどを同席した小学生の子どもたちにもわかりやすく話をしていました。

生徒の反応(アンケート結果)

今回の活動に参加した生徒にアンケートを実施しました。
Meta Quest3を使用したデザイン作成が従来の紙と比較してどうだったかを検証することがアンケートの狙いです。

① 普段のデジタル機器の取り扱い

Meta Quest3を取り扱う以前に,普段のデジタル機器の取り扱いについての得意・不得意を聞きました。

半数はあまりデジタル機器の取り扱いに抵抗を感じないが,残り半数は苦手に感じるという結果でした。

② Meta Quest3の操作について

普段のデジタル機器については苦手と感じた生徒も,Meta Quest3の操作は比較的思うように操作できていたようでした。

一方で,思い通りに操作できなかったという生徒も一部見られるが,VR酔いによるものであったため,VR酔いの対策(パススルーにするなど)が必要になると感じました。

③ バーチャル上でのデザイン作成について

Meta Quest3の操作と合わせて,バーチャル上でのデザイン作成についても思い通りに操作できたと感じる生徒が半数以上を占めました。

一方で,こちらの回答について思い通りに操作できなかったと感じている生徒が見られました。VR酔いの対策と合わせて,ソフトを取り扱う練習を事前にしておく必要があると感じました。

④ 紙でのデザインとの比較

まだまだ普段から紙に絵を書いたり,文章を書いたりすることが多いため,紙を使ったデザインが良い・慣れているという生徒が大半でしたが,バーチャル上でのデザインの良さを感じている生徒も多かったようです。

少数派ではありましたが,バーチャルがいいという回答をする生徒も見られました。

⑤ バーチャル上でのデザインの可能性について

生徒たちはバーチャル上でデザインを考える利点については十分理解しており,それを実行するためにはMeta Quest3の操作に関する習熟が必要ということがわかりました。

今回のデザインを考えるワークショプでは,半日という短い時間でMeta Quest3の操作とバスラッピングのデザインの両方を行なったため,今後同じような取り組みを実施するためには,「操作の練習」と「デザインの検討」をそれぞれ分けて実施する必要があると改めて感じました。

まとめ

この記事では,鳳凰高校サイエンスクラブが鹿児島県内初となる自動運転バスのラッピングデザインをXRの技術を活用しながら市に提案し,実現したプロセスをまとめました。

デザインを考えるにあたりXRの技術なども使用しましたが,デジタルとアナログの両方の良さをうまく組み合わせながら,生徒の活動をサポートするのが大事だと感じました。

アンケート結果からも,今のデジタルネイティブ世代は従来の紙でのデザインと合わせて,バーチャル上でのデザインを組み合わせることでよりクリエイティブに活動が展開できることが示唆されました。

今後も鳳凰高校では時代に合わせたデジタルの活用を推進していきます。

謝辞

今回の活動にあたり,XR Meetup Kagoshimaの鮫島歩さんに全面協力をしていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

【報道①】毎日新聞

2024.10.4 毎日新聞掲載

【報道②】南日本新聞

2024.10.8 南日本新聞掲載

【受賞】

PCカンファレンス2025のU-18部門で「最優秀論文賞」をいただきました!


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鳳凰高校サイエンスクラブ もし、この活動に共感してサポートいただけたらものすごく嬉しいです。サポートいただいたものは、次回の活動にすべて充てたいと思います。

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