13文字の代償。
~ルールを守れなかった夜と、813という数字の記憶~

画面に表示されていたのは、「813文字」という数字でした。規定は800文字。たった13文字のオーバーです。
「このくらいなら、まあ大丈夫だろう」
そう自分に言い聞かせながら、私は送信ボタンを押しました。
でも、押した直後から、胸のあたりがなんとなくざわついていました。
「内容はちゃんとしてるし、問題ないはず」
そんな言葉を自分に向けながら、その夜は眠りにつきました。楽になりたくて始めたはずのAI副業で、なぜあんなにもやもやしていたのか。
それが何だったのか、しばらく経ってから少しずつ分かってきました。
動画を一本も見ずに案件へ飛び込んだ、2024年の夏
2024年の夏、あるAI講座に入会しました。
月額1万円を切る料金で、「これで収益化できる」と迷わず申し込みました。今のような派手なウェビナーや合宿はほとんどなく、当時はシンプルな構成でした。
でも、プラットフォームを開いてみると、動画がずらりと並んでいて。どれから手をつければいいか分からないまま、結局一本も視聴せず日が過ぎていきました。
「とにかく動かなければ」という焦りだけが先走って、インプットを完全にすっ飛ばし、クラウドワークスで見つけたライティング案件に勢いで応募しました。
条件は800文字のテストライティング、納期3日。
「AIで生成すれば、すぐ終わる」と思っていましたが、削っても削っても言葉が溢れ、800文字の壁をどうしても越えられませんでした。
「内容がよければ、13文字の誤差くらいは問題ないはず」
そんな都合のいい理屈をつけて、私は数字をそのままにして提出しました。
Zoomの画面で固まった、あの数十分
数日後、クライアントからZoomでのフィードバックが入りました。
画面越しに向き合った瞬間から、なんとなく嫌な予感がありました。
「文字数、13文字オーバーしていますよ」「プロなら文字数は守らないと」
言われた瞬間、胃がぎゅっと締まるような重さがあって、頭の中が少し白くなりました。覚悟はしていたはずなのに、実際に言葉にされると全然ちがいました。
続いて、AIで書いたことへの指摘が来ました。
「少しなら構わないけど、2割は自分の言葉で書いてほしかったんです」
痛い部分を突かれた、と思いながら、「すみませんでした」しか出てきませんでした。説教は続きました。正直しんどかった。
そのZoomが終わった後、「もう二度とライティングはやらない」と思いました。
当時の私には見えていなかったこと
あの頃の私は、文字数を守ることを「形式上のルール」だと思っていました。
13文字を削ることは単なる手間でしかなかったし、「AIが生成したんだから」という言い訳が、心のどこかに用意されていたのかもしれません。でも、提出したのは私自身です。
振り返ると、ルールを守ろうとしていたのではなく、ルールを値踏みしていたのだと思います。
「これくらいなら大丈夫」という判断を、何の根拠もなく自分に許していた。誰かの仕事の基準に応えるとはどういうことか、という感覚そのものが、当時の私にはまだ育っていなかったのかもしれません。
インプットを飛ばして勢いで飛び込んだ焦りが、そのままルールへの雑さに出ていた気がします。
今、あの経験を振り返って
あれから時間が経ちましたが、あの813という数字はまだ頭に残っています。
あの後しばらく、私はライティング系の案件には近づきませんでした。懲りた、というより、嫌になった感じです。今は別のことを試しながら、あの経験が何だったのかをまだ整理できていません。
「失敗から学んだ」と言えるほどすっきりしていないし、「あれで良かった」とも思えない。そもそも13文字を削れなかったのか、削らなかったのか、当時の自分に聞いてみたい気もしますが、どちらにしても答えは出ないと思います。
あの夜、送信ボタンを押した指の感触だけが、今もときどき戻ってきます。
私のAI副業迷走の記録を、他にも書いています。
