あいぼうのイルカは、今日もぼくの枕のとなり。
ぼくのあいぼうは、青いイルカのぬいぐるみ。
名前は「ルカ」。
夜眠るときは、いつもぼくの枕のとなりに転がってる。
だけど、ぼくは二年生になってから、ちょっとだけ大人ぶりたい。
みんなの前で「ぬいぐるみがないと眠れない」なんて言ったら、笑われちゃうかもしれない。
ある日。教室で話していたら、
同じクラスの優斗が「蒼太って、まだぬいぐるみと寝てるらしいぜ」と大声で言った。
「ち、ちがうし!」
ぼくはムキになって言い返した。
「俺はもう、一人で寝れるし!イルカなんて、べつに好きじゃない!」
優斗はけらけら笑って、他の子もつられて笑った。
胸の奥がぎゅっと痛くなる。
その夜。
いつものように枕の横にいるルカを見たら、
なんだか目が合わせられなくて、
布団の下に隠してしまった。
なのに、暗い部屋で一人になると涙が出てきた。
「ごめん、ごめんね」
声が震えた。
だって、ぼくは知ってる。
怖い夢を見るときは、ルカがそばにいてくれること。
学校で嫌なことがあったら、ルカが話を聞いてくれること。
ぼくの小さな胸の中にある寂しさを、いつも吸い取ってくれたこと。
なのに、ぼくは友だちの前で、
「好きじゃない」なんて、言っちゃった。
情けなくて、もっと泣きたくなる。
――そして思い出した。
サンタさんは、ウソが嫌いだってこと。
クリスマスまであと少し。
このままだと、プレゼントがもらえなくなる!
翌日、学校から帰るとすぐに、ぼくはお母さんに言った。
「ぼく、ウソついた。ルカと寝てるし、だいすきだし……。」
涙がぼろぼろこぼれる。
お母さんは優しくぼくの頭をなでながら言った。
「ウソをついても、自分が強くなったり、かっこよくなったりはしないのよ。
でもね、お母さんに本当のことを話せた勇気は、サンタさんにも届くと思う。」
ぼくは鼻をすすって、うなずいた。
夜、ルカをぎゅっと抱きしめて言う。
「これからも、ずっとあいぼうでいてくれる?」
ルカは黙ってる。でも、暖かかった。

クリスマスの朝。
ぼくは飛び起きてツリーへ駆け寄った。
きらきら光る箱がひとつ。
開けると、中には――
宝石みたいに輝く飾りのついた赤いマントと、王さまみたいな王冠。
カードが一枚。
『大切な相棒を、これからもたいせつに。
ほんとうの気持ちを話せて、えらかったね。
メリークリスマス。サンタより』
ぼくは笑いながら泣いた。
ルカに王冠を乗せ、ぼくもマントを羽織る。
なんだか海の王さまみたいで、ちょっとかっこよかった。
その夜。
ルカはいつもの場所、ぼくの枕のとなり。
ぼくは心の中でつぶやく。
――ウソをついても、勇気を出して謝れば大丈夫。
ぼくらは、これからもずっとあいぼうだ。
ルカの青い背びれをそっとさわった。
まるで笑っているみたいに、やわらかかった。
メリークリスマス。
ぼくとルカに、小さな奇跡を。

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