林間学校から帰った姉に、弟が買ってきたもの。
娘が、林間学校から帰ってきた。
「おねーちゃん、おかえり」
玄関で迎えた息子の声は、昨日までよりすこし得意げに聞こえた。
帰ってきた娘は、しゃべり疲れていた
一泊二日、たくさん遊んで、たくさん学んで、たくさん話したのだろう。帰ってきた娘は、楽しかった報告を一通り終えると、あとはもう電池残量わずかという顔をしていた。
行く前のそわそわした様子を思うと、この疲労感こそが「行ってよかった」の何よりの証拠だった。
「お姉ちゃん、疲れてるから」
夕飯は、鍋焼きうどんにすることになった。
妻が息子を連れて、買い出しに出た。その売り場で、息子がこう言ったらしい。
「お姉ちゃん、疲れてるから」
そう言って息子がかごに入れたのは、かまぼこだった。姉の大好物だ。
帰ってきてからも、息子は台所に立つ妻の隣から離れなかった。具材を渡したり、土鍋に並べたり、母の鍋焼きうどん作りを最後まで手伝っていた。姉の好物をちゃんと知っていて、疲れている姉のために、自分にできることを考えて、動いていた。
昨日、いちばん上だった子
昨日、この息子は一日だけ「いちばん上の子」だった。両手を繋いで、甘えて、僕らを独り占めした。
その同じ子が、今日は姉のためにかまぼこを選んでいる。
甘える側から、気遣う側へ。たった一日で行き来できるものなのかと、正直驚いた。もしかすると、昨日たっぷり甘えて満たされたぶん、今日は誰かに優しくする余裕が生まれたのかもしれない。
湯気の立つ土鍋の中で、かまぼこは娘の器にいちばん多く入っていた。娘はそれを頬張りながら、林間学校の話の続きをした。息子は、それを嬉しそうに聞いていた。
いつもの並びが、帰ってきた。
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