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林間学校から帰った娘に「何が楽しかった?」と聞いたら、しおりに載っていない答えが返ってきた

小学校1年生の娘が、1泊2日の林間学校に行ってきた。

娘にとって、親と離れて泊まる学校行事は初めてだ。出発の朝は泣くんじゃないか、緊張で固まるんじゃないかと、父は前日からひとりで気を揉んでいた。

心配は、玄関を出て10秒で終わった。

近所の仲良しの友達と一緒だった娘は、「楽しみー!」と満面の笑みで歩いていった。振り返りもしなかった。ソワソワしていたのは、どうやら父だけだったらしい。

帰ってきた娘に、定番の質問をした

翌日、娘が帰ってきた。

親としては、聞きたいことが山ほどある。山は登ったのか。夜は眠れたのか。ごはんは食べられたのか。それを全部ぐっとこらえて、まずは定番のこれを聞いた。

「何がいちばん楽しかった?」

頭の中では、答えの候補まで勝手に用意していた。キャンプファイヤーだろうか。友達と枕を並べた夜だろうか。

娘の答えは、そのどれでもなかった。

「せんせいの大好きなガリガリくん、たべた」

……ガリガリくん?

聞けば、先生の大好物だというガリガリくんを、みんなで食べたのだそうだ。それはもう、嬉しそうに話してくれた。

山でも、キャンプファイヤーでも、友達との夜更かしでもない。ガリガリくん。しかも「先生の大好きな」という枕詞つきで。あの棒アイスは、家の近所のスーパーでいつでも買える。買えるのだが、6歳の中では、林間学校のハイライトはそこだった。

まあ、いい。旅先で食べるアイスは格別だというのは、大人にも覚えがある。

本番は、この後だった。

絵日記には、もっとすごいことが書いてあった

林間学校の宿題に、絵日記があった。

1泊2日の思い出を、絵と文章で一枚にまとめる。娘がその一枚に選んだテーマを見て、父は二度見した。

シャンプーハットだった。

初めて使ったシャンプーハットが、素晴らしかったらしい。髪を洗っても顔が濡れない。そのことに、娘は心の底からびっくりしたのだという。絵日記には、その感動が堂々と描かれていた。

先生たちが何ヶ月も前から準備してくれたであろう、山も、自然も、レクリエーションも、すべてを差し置いて。娘の1泊2日は、ガリガリくんとシャンプーハットに集約された。

しおりに載っていない思い出

正直、最初は笑ってしまった。

でも、後からじわじわ考えた。

大人は旅の価値を、行き先や行事で測ろうとする。しおりに書いてあることが、旅の中身だと思っている。でも、子どもの心に残るのは、いつだってその余白の部分なのだ。予定表のどこにも書いていない、ガリガリくんとシャンプーハット。

思い返せば、自分の子どもの頃の記憶もそうだった気がする。旅行の行き先は忘れても、道中のくだらないことは、なぜか覚えている。

娘はきっと、大人になってもこの絵日記のことを覚えていないだろう。でも父は、たぶん一生覚えている。

君の初めての旅は、ガリガリくんとシャンプーハットだったよ。


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