(STORY)【MC Life】1月は撮影の季節
<注意>
この作品は、生成AIによる画像・動画などの生成物と、筆者による文章との組み合わせによって作成された、完全なフィクションです。
実在の人物や団体、出来事とはまったく関係がなく、現実世界を描いたり、影響を及ぼしたりしようとする意図は一切ありません。
「・・・ぇ・・・ぅん・・・でぉす・・といったコンセプトで進めたいと思います。よろしいですか?」。
正月三が日、よく晴れた冬の日の、あるホテルの一室。
美しく華やかな晴れ着に身を包んだ若い女性が、ベッドの端に腰かけ、ある男性と向かい合っている。
男性は30代半ばぐらいだろうか。熱心に話をしているが、その言葉ははじめのうち途切れ途切れで、なにを言っているのか、彼女はうまく聞き取れずにいた。
「ごめんなさい、わたし・・・ちょっと一瞬、話を聞けていなかったようです、すみません。
撮影する写真の説明をしていただいていたんですよね、すみませんけど、もう一度お願いできますか?」
「もちろん。何度でも説明させてもらいますので」
大きなカメラバッグを足元に置いた男性が、そう答えた。
めったに着ることのない和服、それも晴れ着という特別な装いを写真におさめるため、カメラマンである男性にお願いをして、撮影場所であるホテルの一室で段取りを確認していたところだったようだ。「ようだ」というのは、彼女の中の記憶があいまいで、ぼんやりとしているからだ。
<どうしてだろう、目の前で、一所懸命に説明を続けてくれている人の話をちゃんと聞いていないなんて・・・>
彼女は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。せめてしっかりと相手の眼を見て話を聞いていなければ・・・そう思い、彼女は精一杯の笑顔を見せた。
ただ、そのいっぽうで彼女は、自らの心の中に次々と生まれてくる多くの疑問について、どうしても考えを止めることができず、ひとり悩んでいる。
<そういえばわたし、この部屋までどうやって来たんだろう?ここに来る前はどこにいたんだっけ?
撮影をこの人にお願いしたのだと思っているけど、この人が誰だったか、なぜだか思い出せ・・・>
そんなことを考えていた彼女に、異変が起きたのはその時だった。
男性が声をかける。
「どうしました?」
「あぁ、急に頭が・・・すみません、痛くて、ちょっと我慢できそうにないんです、あぁぁぁぁ、頭が痛い!!痛い!!なにこれ急に、ちょっと、ちょっと!!!」
女性は突然大声を上げ、頭を抱え、苦しみ始める。どうやら耐えられないほどの頭痛に襲われているらしい。
向かいに座っているカメラマンの男性は、彼女のそんな様子にも驚くことなく、冷静さを保ったまま、独りつぶやく。
「魅具屋のやつ、道具の質が落ちてきている気がするな・・・いろいろと良くしてもらっているとはいえ、代金はきっちり払っているわけだし、今後のためにも、文句の一つも言っておかないとな。
まあ、でも仕方がないな、もう一度・・・」
男性は、誰にともなく話し終えると、ポケットから何かを取り出し、頭を抱えて苦しむ彼女の目の前に掲げ、揺らし始めた。
「これを見て」
そう話しかけられ、頭の痛みに耐えかねてうずくまっていた女性が、苦し気な表情で頭を上げた視線の先には、男性が持っているペンダントがあった。
いま彼は、ペンダントに付いている糸を親指と人差し指とでつまみ、大きく揺らし始めている。ペンダントに眼を止めるやいなや女性は、痛みなどはじめからなかったかのように、急に押し黙り、光を見つめ始める。
それはどこの店でも売っているような、簡素な作りのペンダントだった。少し異質な点があるとすれば、そのライトの小ささからはあり得ないほど、放たれている光が極めて強いことで、女性の顔の陰影がくっきりと強調されるほどのまぶしさだ。
彼女の顔から一切の表情が消え、眼がゆっくりとペンダントの光を追い始める。男性が声をかけた瞬間から、彼女が反応を起こすまで、ものの2,3秒といったところだったろうか。
「ペンダントの光が見えますね。あなたはもう、この光から目を離すことができない。目をそらそうとすればするほど、自然と目が光に引き寄せられてしまう。あなたはもう完全に、光のとりこになってしまった。」
そう男性が話しかけ続けていると、彼女はすっかり落ち着きを取り戻し、もう声を上げることもなく、頭を抱えていた腕も下におろしている。
その目線は少しずつうつろになり始め、いまでは彼女の眼に、意思の力を読み取ることすらもできなくなりつつあるほどだ。
「もっと光を見て・・・そう、美しく輝いていますね・・・光を見ていると、あなたと光が一体になって、光の中にあなた自身が入っていくような感覚を覚えますよ。ほら、もう意識して光を見る必要はない・・・なぜなら、あなたの眼の中に光が入ってきて、やさしく光り続けているからですよ・・・」
男性が話しかけると、ペンダントの明るく細やかな光が彼女の眼に反射して、キラキラと輝きはじめる。まるで本当に、彼女の眼の中に光が宿ってしまったかのようだ。
するとやがて、眼に光を宿したまま、彼女の視線は宙をさまよいはじめた。顔は前を向いているが、視線が定まらず、いったいどこを見ているのか、わからなくなったかのように見える。
その時を逃さず、男性が声をかける。
「体がすーーーぅっと自然に後ろに倒れていきますよ、3、2、1、はい」
男性が数え終えると、その言葉どおり、彼女の体はまるで何かに引っ張られるように、自然な動きで後ろへと傾き、そのままベッドの上に倒れこむ。体を横たえたあとも、彼女の眼はぼんやりと見開かれたままだ。
倒れこんだとき、彼女の髪飾りが少し外れかけてしまった。男性は少し考えて、髪飾りを外し、きれいに結われていた髪をほどいて、女性の頭のうしろで、髪が大きくきれいに拡がるようにしつらえた。
<うん、これで良い。黒髪の美しさが、全体の美をいっそう引き立たせる>
そう一人思いながら男性は、自らの半生の間、心を奪われつづけてきた対象に思いを馳せていた。
女性の衣服。この世の中で最も美しく、価値のあるもの。洋服もよいが、やはり和服、なかでも晴れ着という着物は、色使い、生地の手触り、空気感を取り込んだ柔らかなデザイン、すべてが素晴らしい。着物それ自体が持つ美しさに加え、身に着けている女性の美しさを際立たせさえもする、その点においてまさに美の結晶であり、極致といってもよい。
この美しさを、何かの形で残したい。写真に撮り、後から何度もじっくりと細部の様子を確かめ、味わい尽くしたい。
物心がついてからというもの、男性は常にそう願っていた。しかし、女性に知り合いが少ない男性にとって、そうした撮影のモデルを見つけることは非常に難しい。街中で突然話しかけ撮影を依頼したとしても、妙な目で見られるだけで終わることだろう。
そんな思いを抱えて生き続けていた彼が、ふとしたきっかけで知り合ったのが「魅具屋」だった。魅具屋は、いろいろと世話になったお礼にといって、このペンダントを渡してきたのだ。
<心に秘めた願いがあるんでしょう?だったらこれで叶えられるんじゃないですか?まあ、何回か使ったら交換が必要ですけど。
え?いえいえ、もちろん私も商売人である以上、お代は頂きますがね>
魅具屋はそう言って、なぜかその場にはふさわしくないような、屈託のない笑顔を見せた。
なんでもこのペンダントの光には、それを持っている者以外の人心を魅了し、話しかけた言葉のとおりに心を導くことのできる力が備わっているらしい。半信半疑のまま、男性はペンダントを受け取った。
それからというもの彼は、街へと足を向け、ペンダントの持つ力に驚かされながら、写真を撮り続けている。特に晴れ着の女性が増える1月は、彼にとって、1年の中で最上級の幸福に満ちた季節になった。
はじめのうちこそ、緊張と気恥ずかしさとから、撮影を始められるようになるまでの過程はこの上なくぎこちなく、被写体を目の前にしながら、寒い季節にも関わらず冷や汗でびっしょりになったものだった。
しかし最近はすっかり慣れた様子で、堂々と、まるで催眠術師にでもなったような口調で、被写体の女性に向けて、流暢に言葉を紡げるようにまでになっていた。
いま男性は、部屋の照明をわずかばかり落としたあと、ベッドのうえで天井へとぼんやりとした視線を向けている彼女の眼の前に、あらためてペンダントをぶらさげている。
「さあ、もう一度、このライトをじっと見て・・・」
そう言われた彼女は、顔を、光の差す方向へわずかばかり傾けたが、もはやその目にはペンダントが映っているのかどうかさえも怪しい。目は開いているものの、彼の言葉どおり、彼女にしか見えない美しい光が、彼女の視界全体を覆っているのだろう。
左右にこまかく動き続ける眼球の動きが、深いトランス状態へと導かれていることを示している。
「わたしが次に指を鳴らすと同時に、あなたの意識はさらに深い深い場所へと落ち続け、もう誰も手を差し伸べることができなくなる場所へとたどり着きます。もちろん、あなた自身も含めてね。
そして、あなたに話しかける私の言葉だけが、あなたを、意識の地上へと連れ戻すことができます。
しかし、その深い場所は、非常に心地よい場所です。いつまでもいつまでもとどまっていたくなるほど、夢のような時間を過ごすことができますよ。
さあ、よいですか、一気に深いところへ落ちますよ・・・はい!」
そう言って男性が指を鳴らす。
彼女は少しだけ、声にならない声を吐息とともに漏らしたかと思うと、一気に最深の場所へと沈んでいった。
<さて、これで準備は整った。では本題に入るとするか・・・
勢いで髪をほどいてしまったけど、暗示でなんとかなるだろう。
それにしても・・・やはりこのうえなく美しい・・・>
撮影用のカメラを手にした男性の顔に、思わず笑みが浮かぶ。
撮影時にはいつものことだが、これから至福の時間を過ごせるという喜びと、早く撮影を終え彼女を戻さなければならないという焦り、それらが一体となることで、男性は胸中に妙な高ぶりを覚えていた。
彼はレンズキャップを外し、はやる気持ちを抑えるかのように、ゆっくりとファインダーを覗き込んだ。
(了)
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