こんな本を読んだ 『思ひ出す事など』 夏目漱石
比較的最近読んだ本の感想を投稿しています。古い本が多いです。『安っさんのこんな本を読んだ』というマガジンにまとめます。
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『思ひ出す事など』
2026年最初は夏目漱石の『思ひ出す事など』です。
昨年1月から始めた「漱石全部読む」。主要小説を順番に読んでいるところですが、今回は漱石の前期3部作と後期3部作の中間の時期に書かれた随筆。
1910年夏、胃潰瘍で入院していた漱石は、退院後、養生のつもりで修善寺に。
が、むしろ悪化し再度吐血。かけつけた医師や妻見守る中三たびの吐血をして危篤となった。
さいわい回復に向かい、東京にもどって胃腸病院に入院。翌年同院を退院した。本書はその回想である。
療養先で悪くなるというのはマヌケな話ではある。だが、死にかけた体験は深刻なものであろう。
まわりの描写は精密。人の対応やこころくばりの描写も緻密。
これに対し、自身の病状への描写は他人ごとのように客観的。むしろ、一貫してユーモアをもって描かれる。
ところどころに置かれた漢詩や俳句。不調法にて漢詩はわからないが、俳句がいい。たとえば、
逝く人に留まる人に来る雁
菊の雨われに閑ある病哉
別るるや夢一筋の天の川
有る程の菊抛げいれよ棺の中
風に聞け何れか先に散る木の葉
ユーモアやあたたかみがあって、これも漱石の一面。
私も昨年一月、肺炎で死にかけた(胃ガンの手術はそのあと)。だが、こんな病状記は書けない。そりゃ漱石と比べようとはおこがましいが、漱石の客観とユーモアは持って生まれたものかなあ。
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