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30歳になったら死ぬつもりでいた

(2017/07/03)

タイトルが引くほど暗い。

最初にそれを思ったのは、多分17歳か18歳の時だった。正確なことは覚えていない。当時はなにをいつ思ったかわからなくなるくらい毎日似たようなことを考えていた。具体的に言うと、その頃は基本的に毎日全員死ねと思っていて、でもそれは全員殺すという能動的な感情ではなくて、基本的に毎日死にたいとも思っていて、でもそれは行動に移すほど能動的な感情でもなかった。死にたくなるよなるだけだけどっていう。あの曲のあの部分を聴いて「わかる」と思った人は多分この世に527593471人くらいいると思うんだけれど、わたしもその中のひとりだった。

死ぬ理由がたくさんあった。けれど、生きる理由も少しはあった。その少しをかき集めて生きていた。
結局のところ生きたかったんだと思う。

で、そんな風に生きている中で、30歳になったら死のうと決めた。
なぜ30歳なのかはよくわからない。それも思い出せない。まあどうせキリがいいからとかそういう理由だと思う。20歳だと近すぎるし40歳だと遠すぎる。30歳。ギリギリ、その頃なにをしているのか想像できる範囲内。
30歳になったら死ぬ。たとえその時どれだけ楽しくても、幸せでも、わたしの人生はそこまで。そう決めた。どうにかそこまで頑張れば終われるんだと思うと少し楽になった。そこまでは生きてみようと思った。あの頃、果ての見えない苦しみを背負えるほど強くなかった。だから自分で終着点を作った。それもきっと、「今」死なないための手段だった。
結局のところ、生きたかったんだと思う。

今年の春に22歳になった。誕生日は、日付が変わる瞬間を友人達にカウントダウンしてもらい、シャンパンを開けた。幸せだった。祖母からしかお祝いの連絡が来なかった数年前とは大違いだなと思った。あの時はありがとうねおばあちゃん。

幸せで、少しだけ泣いて、帰りの地下鉄で、あと8年だなと思った。

30歳になったら死ぬ。決めたのは5年も前のことで、あの時と今では環境もわたし自身の考え方も全然違う。死ねとか死ぬとかそういう物騒な話も随分減った。思っても、例えば今後お前が乗るバスが全て目の前で発車したらいいのにとか、友達に貸した本に変な開き癖がついた状態で返ってこいとか、この先の人生、飲み放題で頼んだ飲み物が全て20分遅れで来いとか、そういう小さな不幸を願う程度の話で、そんなの可愛いもんでしょ。
ときどき死にたくなっても、もう死ぬ理由より生きる理由の方が多い。かき集める必要が無くなった。
それなのに「30歳まで」という言葉が、今も呪いのようにわたしを縛っている。こんなはずじゃなかった。そんなつもりで決めたんじゃなかった。

仲の良い男友達が今年でちょうど30歳になる。わたしは彼を下の名前で呼び捨てで呼び、タメ口で話す。そういうふうに一緒にいると年の差を忘れそうになるけれど、ふとした瞬間にこの人は30歳になるんだなと思ってゾッとする。わたしはこの人と同じ年になる時に死ぬのかと思って怖くなる。そして、怖くなったあと、いやなんで自分で決めたことに自分で怯えてるんだよ、とまたゾッとする。
自分で勝手に決めただけなのに。例えば、30歳になった瞬間毒が回るとか、そういうんじゃないのに。馬鹿だな。馬鹿です。そういえば昔紫鏡っていう言葉をハタチの誕生日までに覚えてると死ぬとかいう都市伝説があったよね。あれみたい。

何年か前、知り合いの知り合いの知り合いが、42歳で命を絶った。遺書に「何年も前から40歳で死ぬと決めていたが、思ったより人生が楽しくて予定より延びてしまった」と書いてあったと、聞いた。
わたしだと思った。
わたしだ。わたしと同じことを考えて、実行した人が、この世に1人いた。きっとわたしもこうなるんだ。

30歳になったら、という自分の言葉が、今日もわたしの未来を制限する。

このままだと全然死にたくないのに「決めていたから」とか言って30歳の誕生日に銭函の海にダイブしそうで怖い。
笑えない。
生きたかっただけなのにな。

今は、人生、つらいことも多いけど、楽しいこともあるよな、と、思って生きてるよ。本当だよ。酸素と海とガソリンとたくさんの気遣いを浪費してる。それでも生きていくつもりでいる。
わたしはいつか呪いに勝てるだろうか。

最近は、「人生30歳まで、あとは余生」という方向になんとか思考を転換してみている。30歳までは丁寧に生きて、そのあとも生き延びたらラッキー。30歳までは「どんなに苦しくても30歳で終われるからそこまで生きよう」、30歳からは「もう余生だし頑張る必要もないしいつでも死ねるんだから今じゃなくてもいいか」、で。なんとかならないかな。なんとかしてくれ。書いていて本当に嫌になってきた。なんとかならないかなあ。ごめんねお父さんお母さん。なんとかしたいよ。

死ぬ時、余生、思ったより長かったなあ、って言えたらいいなあ。ほんとは30歳になったら死ぬつもりだったんだけど思ってたより楽しくて生きちゃったな、って、32歳とかじゃなくて、もっともっと想像もつかない年になった時に、言えたらいい。
暗いことを書いていると恥ずかしいけれど前向きなことを書くとそれも恥ずかしいので筆が進まなくなってきた。生きようね、みたいなの、超恥ずかしいね。でも言うよ。生きようね。死にたくなるけど、なるだけだからね。星の隅で継続しよう。

明日の夜ご飯はなんだろうね。楽しみだね。毎日楽しみにしていたいよ。

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