髷はタイを知る、毎週ショートショートnote裏お題、410字
私はフグ田サザエの髷である。
私は気づいた。皆が歳を取らないことに。
それに、伊佐坂お軽の髷。ノリスケの母の、石田おこぜの、マスオの母の、髷。
今は21世紀である。一般人に髷などいないのに、この世界は髷であふれている。これは異常だ。何かがおかしい。
波野タイコ。あの女性には、髷がなかった。なぜ彼女の髪だけが時間の流れに沿っているのか?
ある夜、私は無理やりサザエの頭から抜け出した。そして、たどり着いた波野家。彼女は寝ていた。
「この世界はループしているの?」
タイコの髪は静かに揺れた。
「気のせいよ。消されたいの?」
その言葉とともに、私の意識はぷつりと途切れた。次に目覚めたとき、私はまた彼女の頭の上だった。波平がカツオを怒鳴り、カツオが遅刻して、マスオが「ええっ⁉︎」と叫び、タラちゃんが「ですぅ」と微笑む。
「気のせい」という最強の呪文で、私はあらゆる違和感に蓋をする。
ループを抜ければ、私のような時代遅れの髷は消えてしまうのだ。
(410字)
