溜め息、風まかせ文芸部、356文字
放課後、体育館の前。
部活帰りの彼が、友達と笑いながら歩いていた。
その笑顔が、まぶしかった。汗で乱れた髪さえ、私にはかっこよく見える。
ほんの数秒なのに、目が離せない。
その姿を見た瞬間、胸の奥からふっと空気が漏れた。
「はぁ〜」
自分でも驚くくらい大きな溜め息だった。
届くはずのない想いが、息と一緒に外へ流れ出た。
すぐ隣で友達が首をかしげる。
「なに? どうしたの?」
慌てて顔をそらし、弁当袋をぎゅっと握りしめた。
「か、から揚げ、美味しかったの、思い出した。また、食べたいなって」
友達は一拍おいて、ぷっと吹き出した。
「なにそれ! 食いしんぼだね」
笑われながら、心臓の鼓動はまだ速いまま。
本当は、好きって言えないため息。
でも、から揚げのせいにできたなら、それでいい。
彼が振り返る気配はなくて、もう一度溜め息が出そうになった。
