インフル念写、毎週ショートショートnote、904文字、超大作。
頭の中で声がした。
「インフル念写の力を授けよう」
「いや、授けようって……誰なんだよ。それに、どんな力なんだよ」
問い返しても、返事はない。
翌朝、いつも通り学校に行くと——突然、脳内に映像が浮かんだ。
目の前の渡辺が布団に潜り、汗だくでうなっている。
さらに数値――日付、時間、体温、症状がホログラムのように表示される。
体温:39.2℃
明日 10:14
「お前、明日インフルエンザで寝込むぞ」
自分でも何を言ってるのかわからなかった。
でも、その日を境に、周囲の人間の未来の感染状況が次々と表示されるようになった。
誰が、いつ、どこで、どのくらい苦しむかまで、全部。
僕は知らせて回った。
予定があるなら薬を早めに飲むとか、予定変更の連絡をするとかすればいい。
未来が見えるなら、誰かは救えるはずだ。
噂は瞬く間に広がり、僕はいつしか「インフル念写の少年」と呼ばれるようになった。
そのうち、省庁に呼び出された。
会議室では、大臣や専門家が真剣な目で僕を見つめていた。
街角の監視カメラ映像を見ながら、僕は全国の感染未来を読み取り、報告した。
能力は日ごとに精度が増し、翌日の予測だけでなく、一週間先の未来まで見えるようになった。
その結果、感染予定者が、ライブや旅行を避けることでインフルエンザを回避できたと報告されはじめた。
国中が少しずつ救われていく。
ある日、突然、脳内スクリーンの様子が変わった。
家族、友達、通りすがりの人、目の前の議員たちが寝込んでいる。国民全員が感染予定。
体温43度。
発症予定:一週間後。
生存確率:ゼロ。
会議室が静まり返った。官僚たちが顔色を変え、騒ぎ始める。
「対策は?どうしたら予測を変えられる?」
そのときだ。
巨大モニターに見たことのない白と青のツートンカラーの生命体が映し出された。
たらは星人と名乗る正体不明の生命体は淡々と言った。
「政府と交渉したい。我々の条件を飲まねば、致死性の新型インフルエンザで貴様らは全滅する」
政府は即座に態度を変えた。交渉は成立し、国は要求をすべて受け入れた。
なぜなら、未来の結果がもう見えていたからだ。
その時、僕の脳内スクリーンに最後の文字が浮かんだ。
《役割終了。ご苦労であった。》
