ファースト奇襲、毎週ショートショートnote、651字
ようやく、ファーストデートに漕ぎ着けた。
彼女のストーカーだったことは内緒だ。
カフェの入口に足を踏み入れた瞬間、俺は自分が戦場にいることに気づいた。
そこにいるはずのない部隊が、待ち伏せしていたからだ。
俺じゃなきゃ気付けなかったはずだが、テーブルの奥には、彼女の親。さらに両翼には、友人二人が側面支援として布陣している。
完全に包囲網。
気付かぬふりをして、彼女に挨拶をして、席につく。
「後ろの席の方、さっきからこちらを見てるけど、知り合い?」
えっと小声で返して振り向いた彼女は立ち上がった。
「なんでいるの?お父さん、お母さん!」
夫婦は目を丸くした。
「いや、お前もいたのか、偶然だよ」
しらばっくれる両親に俺は奇襲をかけた。
立ち上がって挨拶をしたのだ。
「初めまして!」
その瞬間、両親の眉がわずかに跳ね上がる。予想外の奇襲で混乱している様子だ。
「こちらこそ…初めまして。君は、うちの娘とどういう関係かな?」
「今日、初めて2人で会うはずでした。彼女のことは今まで高嶺の花だと思い、ずっと眺めていました」
しまった。両親を責めるような発言に、ストーカーだったという自白…と後悔していると、父親が言った。
「陰ながら見守っていたということか。親としては安心するな」
なんとか奇襲は成功したようだ。
隣席の友人が立ち上がった。
「それって、窓越しとか、電柱の影とか、通勤路の尾行とか?私、この人見たことある!」
その友人を見ていた彼女の瞳が俺の方に向き、一瞬で冷たくなる。
「やっぱり、そうだったんだ」
俺のファースト奇襲は、味方だと信じていた彼女の狙撃で幕を閉じた。
