株式会社のおと(毎週ショートショートnote、410字)
今の会社にこのまま居ていいのだろうかと悩んでいた。会社が急に年功序列から能力主義に変わった。
ぼんやりと業界の求人誌を眺めていた。ヘッドハンティングのエージェントに渡された非公開のものだ。
「ここをこすると、いい音がする」
膝の上の娘が会社名を指でなぞり微笑む。
「こことここは同じ音がする」
子供の戯言と聞き流していた。
やがて、同じ音がすると言っていた二社の合併が発表され、いい音がすると言っていた会社の株が急騰していた。
私は自分の会社名を娘になぞらせた。
「とっても暗い嫌な音がする」
転職先の第一候補の会社名をなぞらせた。
「この音、大好き。すごくいい音」
私は、娘の得体の知れない能力を信じて、転職した。経営戦略の部長として腕を奮っていた私は、常務取締役として優遇された。
家に帰ると娘が私の名刺で遊んでいた。
娘は、前の会社の会社名をなぞりいい音がすると言い、今の会社の会社名をなぞり嫌な音がすると言った。
そして、私の名前をなぞり…
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
