学生総隠居、毎週ショートショートnote裏お題、423字
少子化の影響で過保護に育った子どもたちは大人になりきれず、社会で子どものように振る舞った。
そこで創設された、親からの自立を促す制度の名前は、学生総隠居。
十八歳になったすべての若者が、丸一年、学校から距離を置くというものだった。
学生からの隠居、学びから離れる制度。1年間は、親の支援が受けられず、働くのだ。働いたら隠居ではないという声もあったが、学問からの隠居ということだった。
意外にも、彼らは社会の労働力となった。
たとえば、コンビニで夜中に働くのは、たいてい十八隠居中の若者だった。
保育士見習いや介護士の研修枠も、たいていは隠居中の若者で埋まっていた。
農業、漁業、町のイベント──
全部、隠居中だからこそやっていた。
だが、ある若者が声を上げた。
「隠居なのに、なんで働くんだ?」
その年、若者の8割が本気で隠居した。
宅配便は届かず、介護施設で人手が足りず、農作物は収穫されず、保育補助員がいなくなった。
突然、社会が回らなくなった。
そして、国は崩壊した。
