髭は恋をする、毎週ショートショートnote、410字
私は口髭。
鏡に映る自分が大好き。いや、正確には、鏡に映る彼が好きだった。彼も私を見て微笑んでくれる。
でも、時々彼は怖い。ソフトクリームを食べる時、私の体に白くて冷たいものが塗りたくられる。冷たくて体がネバネバする。
突然、カミソリで剃られてしまうこともある。ハサミで切られる。左側だけ不自然に短くされたこともあった。私はその日、精神的に死んだ。
歯磨きの際、泡が私に飛び散る。トーストのパンくずが絡まる。コーヒーを啜ったときに濡れる。彼は私を虐待していると睫毛が言う。
でも、鏡の彼は私を見て微笑んでくれる。私がいないと彼はきっとダメになる。
彼は、美しい女とよく過ごすようになった。彼女は敵だ。
彼女と彼がキスをするとき、私は針のように鋭利になり、ちくりと刺した。彼女は顔をしかめ、彼に言った。
「ねえ、剃って」
白い泡が塗られた。銀色の刃が近づいてきた。私は叫んだ。
「やめて。お願い」
私が最後に聞いたのは、ジョリ…という音だった。
(410字)
