誤字審査、毎週ショートショートnote、413字
まさか、あの夏目燥石賞で、最終審査に残るとは思わなかった。
いよいよ、発表も近づいた夜、なかなか寝付けなかった。しかし、「どうせ寝られないなら執筆を!」と始めたら、即寝落ちしてしまった。
いつものことだった。
そして、夢を見た。顔の部分に「哀嬌」と書いたお面をかぶった男がぺこぺこと頭を下げている。
その「愛嬌 」の誤字野郎が礼を言ってきた。
「あの時、見落としていただいた誤字です。おかげで生き残りました。お礼に私、頑張りました。それでは」
目を覚ました俺は頭を抱えた。あれほど、何度も見直したというのに、誤字ってたのかと。
そのタイミングで、電話があった。
「夏目燥石賞事務局です。あなたの作品が、夏目燥石賞に選ばれました。
喜びの場面で用いる「愛嬌」をわざと「哀嬌」とされたのが、微笑みの中に漂う一抹の哀愁や孤独感を示唆していると絶賛されました。
燥石が、自分の名前を漱石にせず、乾燥や躁的な面を連想させる燥石としたのに通じるものがあると」
(413字)
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漱石
中国の晋の時代、隠者である孫楚(そんそ)が「石に漱ぎ流れに枕す(石を口をすすぐものとして使い、川の流れに頭を置いて眠る)」と言い間違えたことに由来します。これを指摘された際、彼は機転を利かせて「石は硬く歯を磨くに良く、流れは柔らかく枕に良い」と言い訳し、逆に賢明さを示したとされます。
この逸話から、「漱石」は「自由で風流な生き方」や、「独自の哲学を持つ孤高の人物」を象徴する言葉となりました。
上記の孫楚の逸話には、言い間違いを逆手に取って機転を見せるエピソードが含まれています。漱石の号にも、こうしたユーモアや自分を皮肉るような軽妙さが反映されています。
そして、漱石を燥石にしました。
燥には、はしゃぐという読み方がありますね。
