該当作梨、毎週ショートショートnote、412文字
芥川直木は激怒した。必ず、かの直木賞の審査員を除かなければならぬと決意した。
自らの作品が、今年度の直木賞に選ばれることを疑わなかった。候補作の中では最も完成度が高く、時代性に富み、批評性と娯楽性を兼ね備えていた。実際、複数の書評では受賞確実と謳われ、新聞記者からは事前取材の申し入れさえあった。
にもかかわらず、結果は「該当作なし」。
だから、除くと決めた。殺すのではない。憎しみからでもない。全会一致で選ばせる。作品を認めさせる。
選ばなかった審査員を除く、つまり、次回、全会一致で選ばせることで生かしてやろうということだった。それこそが「除く」ことの意味だった。
前作を遥かに凌駕する作品を書いた。怒りと冷笑と祈りとで編まれた、純粋にして暴力的な文章を。完成した作品の名は、『該当作梨』。
皮肉のつもりだった。あるいは呪詛かもしれない。
全会一致で選ばれた。
報道各社が第一報を打った。
「直木賞、今年も該当作なし」
芥川直木は激怒した。
