合格奇岩、毎週ショートショートnote、441字
受験生の間で密かに知られている奇岩があった。
祈願すれば、必ず合格する。
岩に触れ、願うだけでいい。僕もそこで祈った。
春、合格通知が届いた。奇岩の噂は本当だった。
問題は、その先だった。
講義が理解できない。周囲の会話についていけない。試験は落とす。単位も落とす。
気づけば留年が現実味を帯びてきた。
あの岩に、もう一度祈れば、きっと今度も…そう思った。
岩は、なかった。
どこかに移動したのでは?
もともと説明できない岩なのだから、そんなこともあるかもしれないと思った。
ネットで検索した。
そして、あるページに辿り着いた。
「都市伝説ー合格奇岩」
願えば、必ず合格できる岩。
実は未来から実験のために送られてきた量子演算装置。触れた瞬間、パラレルワールドのうち、「合格する世界線」にのみその人を分岐させる。
風化・欠け・歪みを含む奇岩は、あらゆる方向に面を向け、人をそのどれかの世界線へ分岐させる。
この世界で、岩はすでに回収済み。
なるほど。これなら、不合格の世界線にいた方が、まだ救いがあったのかもしれない。
