じゃない不倫、毎週ショートショートnote、410文字
「前世の妻に会ってみたい」
夫が突然そんなことを言った。
「不倫じゃないんだ。前世で、お先真っ暗な時に彼女は生きる望みをくれた。困っていたら助けたい……恩返しだよ」
私はため息をついた。
「前世の記憶はいつ蘇ったの?」
「昨日なんだ。そしたら、居ても立っても居られなくなって…探してもいいか?」
しばらく黙っていた私は、打ち明けることにした。
「探さなくていいわ。私には、前世の姿と前世の記憶を見る才があるの。あなたの前世の名前は、鍋田三郎。私の前世の夫」
夫は目を丸くする。
「じゃあ、僕は、現世でも、前世でも同じ人と結婚していたんだ。不倫じゃないんだ。一途なんだ」
「良かったわね」
そう言って、私は微笑んだ。
前世で彼が落ち込んでいた時に、私は心の底から寄り添っていた。
でも、彼には内緒にしていることがある。
たしかに、前世、彼は私の夫だった。でも、もうひとつ前の世界で、彼は犬だった。私のペットだったのだ。だから、放って置けなかった……。
