ギター式洗濯機、毎週ショートショートnote、410字
洗濯機とギターは、太いコードで繋がっていた。
洗濯槽は回らない。代わりに、弦の振動が音響増幅器を通って水に伝わる。
「回転しないから、シワになりにくいんです」
店員は誇らしげに言った。
確かに、ジャズでもロックでも、爪弾くだけで水面が細かく震え、汚れが溶けていく。ドラム式より静かで、シワにならない。音が止めば洗濯も終わる。
昔、少しだけギターを触ったことがある。コードもいくつか覚えている。
Tシャツとシャツを放り込み、アンプの電源を入れ、ヘッドホンをし、弦を鳴らした。
水が濁る。
音とリズムは崩れ、洗濯槽の中で色が濁っていった。
慌てて演奏をやめた頃には、白かったはずのシャツは灰色に、Tシャツは黒に近い色に変わっていた。
取扱説明書の最後のページを読んだ。
「通常の技術の方は問題ありませんが、極端に技術が劣っている場合、下手な演奏ほど、洗濯物は黒くなります」
一生懸命練習した。
でも、よく言われるようになった。
「君、黒い服、好きだね」
