濃い古墳、毎週ショートショートnote、裏お題、410字
佐原翔は額の汗を拭いながら、古墳の内部を見つめた。長年の発掘作業の中で、こんな奇妙なものに出会ったのは初めてだった。
石室の壁一面にびっしりと刻まれた碑文。これほど大量の文字が書かれていた古墳などなかった。全ての壁、床、天井に至るまで文字で埋め尽くされていた。
あまりに情報が濃すぎるこの古墳は、通称、濃い古墳。正式には、発見者の私にちなんで佐原古墳と呼ばれた。
炭素年代測定の結果は、間違いなく古代のものだ。なのに、ここには、僕が学習した歴史、この古墳が作られた時代にとっては未来の出来事が、正確に記されていた。
だが、ありえない。
予言がことごとく的中しているし、そこに記されていたのは、紛れもなく現代日本語だった。言語までも予測したというのか。
しかし、予言は今年までで終わっていた。最後の行を見た瞬間、佐原の血の気が引いた。
「僕はこの年、古代に飛ばされた。佐原翔」
――ゴゴゴゴゴゴ……
突然、地面が揺れ始めた。
「嘘だろ……?」
(410字)
