サンタ酸、毎週ショートショートnote、731文字


サンタさんからのプレゼントが来た。世界の平和を壊す原因を溶かす液体の、化学構造式。

さすがサンタさんだ。ヒントをくださいの願いをちゃんと聞いてくれた。

私は急いで研究室に行き、合成に取りかかった。

よかった、私が子供で。
飛び級で大学を卒業し、今は六歳の研究所研究員。
子どもだからサンタが来たし、研究者だからこれが理解できた。

完成した液体の蓋を開けると、空気に溶けて拡散し、増殖しながら世界中へ広がっていく。

「あなたは社会経験がないから、何か新しいことをするときは相談して」
母の言葉だ。社会の仕組みなんて、日本の法律を全て覚えている。

だから、相談しなかった。薬の名前はサンタ酸。
本当は酸じゃない。でも、酸と名づけた方が普通の人にはわかりやすい。
酸は、溶かすものだから。

翌日、みんな、学校にも会社にも行かない。
どうして、こうなったんだろう。

世界は平和になったように見える。でも、大人は仕事をしないと収入が得られないし、学生は勉強して知識を得る年代なのに。

本を一回見れば、必要なページは写真みたいに頭に浮かぶはずだ。テストの点の違いを努力の差と聞いたことがある。見たか、見ていないか。ただ、それだけの違いを努力というのだろうか。

誰だって知識欲で勉強するはず。学問に競う要素なんてないのに、なぜ、学校に行かない?

仕事も、課題を課し、それを完遂するという自己欲求のためではないのか?

意味がわからなすぎて頭を抱えた。
サンタ酸は、予定通り、きれいに世界中の人から「競争心」だけを溶かした。

競争は、もう、どこにもない。
人間同士が競争するから、戦争や喧嘩が起きる。
競争さえなくなれば、世界は平和になるに決まっている。

なくなれば、世界は平和になると思ったのに。私はどこで間違えたのだろう。

いいなと思ったら応援しよう!