火星馬券、毎週ショートショートnote裏お題、410字
手の中に火星馬券──いや、正確には彗星券──があった。
先祖代々受け継がれて来たものだ。馬券というのは、俗称でその性質をわかりやすく表現したもの。正確には彗星券と呼ぶのが正しい。
昭和という時代に発行されたもので、当時軌道が分からなかった彗星のうち、火星に最接近する順位を賭けたものだ。この券は、単勝。一番の彗星を当てるものだ。そして、今、券の通りのカサンドラ彗星が一番で近づいている。
カサンドラ彗星。かつて誰も正確な軌道を知ることができなかった天体。それが今、数百年の時を経て、最終的に火星への最接近を果たそうとしていた。
スクリーンに映し出された彗星が、着実にこちらに向かって進んでいた。
先祖が夢見た勝利が、今、現実になろうとしていた。これで私は大金持ちになれるのだ。
そのときだった。部屋の中に緊急アラートが鳴った。スクリーンの下部に、ひときわ赤い文字が点滅していた。
ーー地球との衝突コース確定
地球への直撃が確定したのだ。
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