⑧非正規の女たち|私は派遣体質
正社員になりたいなんて、思ったことがない。いや、正確には一度だけあった。
二十代の頃だ。みんな就職活動をしていたから、なんとなく、自分もそうしなければいけない気がして。
就活は続かなかった。
会社説明会。面接。自己PR。
どれも、自分には大げさに思えた。
そこまで会社に人生を賭ける気がなかった。だから結局、派遣になった。
最初は一時的にやるもりだった。
でも、気づいたら二十年も経っていた。
派遣先はこれまで何社も変わった。
金融。メーカー。大学。官公庁。
どこに行っても、やることは同じだけど。
初日に挨拶をする。仕事を覚える。
周りの空気を読む。
そして、自分の居場所を見つける。
ある程度決まった作業をこなす。
それだけ。
正社員の人たちは不思議だった。
異動に一喜一憂し、評価に落ち込んだり、
昇進で悩んだり。そんな姿を見るたび、私には関係無くて良かったと思っていた。
もちろん、お給料もボーナスも羨ましい。
でも、その代わりに背負っているものが正社員は多すぎる。自分には無理だと思った。
派遣は気楽。契約が終われば終わり。
嫌な上司に当たれば、次を探せばいいし、仕事内容が合わなければ、次を探せばいい。それくらいの距離感が、私にはちょうどいい。
趣味もある。友達もいる。家族とも仲がいい。人生の中心は仕事じゃない。
仕事は、生活を回すための一部にすぎない。だから、私は派遣でいい。
いや、派遣がいい。
ある日、社員に言われた。
「もったいないですよね。仕事できるんだから正社員になればいいのに。」
「そうですか?」と言って適当に笑ってごまかした。私は、出世したいわけじゃないし、会社を変えたいわけでもない。
ただ、働いて、帰って好きなことをする。
明日の仕事の事を考えて憂鬱になることも無い。それが続いてほしい。
派遣体質ですね、と言われたこともある。
たぶん、その通りだと思う。
悪い意味では捉えてない。
私は、自分に合った働き方を知っているだけ。
