【考察】なぜ女性だけがアイドルをライフワークにできないのか
※この記事は特定の人物を意識して書いたものではありません。
※筆者はグループアイドルの運営には一切の関わりはなく、内部事情を知る立場にはありません。本論の根拠の多くは推測・伝聞および客観的事実によって成り立っています。
女性アイドル(この場合はメンバーの入替えによって体制を維持するグループに所属するアイドルを指す)は基本的に30歳を前にしてグループを卒業し、アイドルを引退する。
一方で男性アイドルは40〜50代まで活動を続けるケースもあり、年齢を主たる理由にしたキャリアの幕引きは稀である。
それでは、現状如実に存在するこの性差は一体何に起因するのか。
そして、女性が就く同類の職業の中で、俳優業や歌手業、タレント業がライフワークになり得るのに対し、アイドル業のみがそうならないのは何故か。
本論ではこの2点を考察していくが、結論を言うと現在のグループアイドル運営体制の構造的な問題が要因であると言える。
生涯に渡ってアイドルを続けたいと希望する者がいたとしても、その選択をすることが限りなく不可能に近いのだ。
・男性アイドルと女性アイドルの違い
女性アイドルの活動継続が難しくなる一因として、一般社会とそう変わらない問題が挙げられる。出産だ。
男性アイドルは妻帯しても子を持っても、ほとんどそれを世間には感じさせずに活動を続けることができる。
しかし母親となる女性にとって、そうすることは難しい。一般企業では女性の社会進出に伴い、産休・育休などの福利厚生の法整備がなされ、結婚・出産後も職場に復帰できる環境が整えられていっているのに対し、アイドルはほとんどの場合、グループに在籍している以上は未婚でいることと子を持たないことを強いられ、結婚・出産を経験した者がアイドルに復帰できる環境は、ない。
仮に運営側から辞めるように促されることがなかったとしても、これらの制限の中でアイドルとして活動し続ける道を選ぶ方が難しいだろう。
・アイドルと他の職業の違い
俳優業・歌手業・タレント業とアイドル業の決定的な違いは、運営発信の案件の多さだ。芸能界の出役職業の多くは受動的なオファーによる案件が大半であるのと対照的に、アイドル運営が手掛けるライブやイベントは本人にほとんど出演有無の選択権がない上に、グループアイドルの収益の多くを占めるためその数も多い。
伝え聞くところによると、グループアイドルでは一週間前に翌週のスケジュールを聞かされたり、前日に急遽決まる仕事もあったりするようだ。
このような状況の背景として、これも伝え聞いた話ではあるが有名なグループアイドルでも年俸制を採用している点が挙げられる。
年俸制を採用することで、不定期なオファーや不明瞭な拘束時間に基づく案件に対してフレキシブルにメンバーをアサインできる。しかし、案件ごとに運営がメンバーとギャランティ契約を結ばないこの現状のため、本人の仕事の選択権は奪われてしまう。
このようなプライベートタイムの少なさ、仕事の選択権の無さがアイドルのキャリアの継続をより困難なものにしていると言えるだろう。
・アイドルをライフワークにするには
これらの根本的な問題が解決されない限り、いくらファンがアイドルに生涯現役を望んでも、アイドル本人に無理を強いることになってしまう。
これらの問題による、30代以降の女性アイドル活動の前例の無さが、「アイドルはずっとは続けられない」という固定観念、および"空気"として伝播しているのであろう。
しかし、このような流れはアイドル運営側にとっても売り上げの重大な機会損失となる。CDに付帯するイベントで成り立つビジネスモデルはメンバーの減少に直接的なダメージを受けるし、卒業後、あるいは結婚・出産後も一定数のファンは離れることなく、ファンビジネスは成り立つからだ。
アイドルを始めとした芸能人は一般的な会社員の雇用関係とは違い、個人事業主であることは重々承知しているが、それでも育休・産休その他に類似する明文化された福利厚生の制度を作ること、そして年契約だけではなく案件単位の契約も選択できる環境を作ること。
これらの抜本的な改革が実現して初めて、アイドルというキャリアにおける性差がなくなると言えるのではないだろうか。
