吉田恵里香さん「『虎に翼』に轟太一を登場させた理由。「LGBTQ+は歴史上ずっと存在したということを、朝ドラで描けてよかった」
さすが、吉田恵里香さん、しびれる。
『虎に翼』の場合は、「理由は人権がテーマのドラマだからです!」と一言で解決したので、内容面に話題が移っていけたのが良かったです。
人権をテーマとする朝ドラを成立させてしまったことが素晴らしい。
フクチ:『虎に翼』の主人公の寅子らと共に法律を学んだ轟太一は、途中で同性愛者だということが視聴者にもわかってきます。本当は轟のセクシュアリティに早くから気づいていた人物がいますが、ある時期までは本人にもそのことを告げない……リアルだなぁと感じました。けど、SNSを中心にハレーションが起きましたね。「轟のことを異性愛者だと思っていたのに裏切られた」「無理やり性的マイノリティを登場させた」といったような声が多かったと思います。
吉田:同性愛者の男性が「はじめまして、ゲイです!」とみんなにセクシュアリティを知らせながら現れるなんてこと、現実世界ではありえないですよね。ドラマでも同じことです。隣にいる人のセクシュアリティは基本わからないものだし、本人が明言したくなければ、する必要もないものです。ハレーションが起きたのを見て、そうは考えない人たちが自分の想像以上に、一定数いるのだなとわかりました。LGBTQ+は令和になって突然出てきたものではなく、戦中戦後、いえ歴史上ずっと存在したということを、ドラマで描けてよかったです。
轟太一くんは花岡のことがずっと好きだったけど、それが恋であることに気付いたのは、花岡が死んだ後。その喪失感について、よねさんが問いかけて初めて、自分が男を好きな男だと気付いた。
よねさんとの恋愛感情抜きのバディ感も好きなのは、男と女の間には恋愛とセックスしかないという決めつけが嫌いな自分の性分かも。
私の人生には、父親以上に師と思える飲み友達(海軍に招集されて特攻隊として散る直前に終戦を迎えて、戦後はハンセン氏病で知られる長島愛生園で働き、後に高校教師となり、人権運動で知り合った)、母と同じ世代ながらフラメンコやタンゴを楽しむ飲み友達(かつての神戸のモダンボーイ)もいたし、恋愛に近い感情を持ちつつも一線は越えないことで家族ぐるみの付き合いを続けられた親友もいる。もうみんな鬼籍に入ってしまったけれど、大切な友情と思い出がある。
そして、同性愛者の友人も知り合いもいる。
人間には男と女しかないという二元論には、ミソジニーの匂いがする。生物学的にも社会文化的にも、性は多様でグラデーションがあるものだと、私は思う。二元論はグラデーションの存在を否定し、女性を含めた性的マイノリティを支配するホモソーシャル男性のマチズモに過ぎないと、私は思う。
なので、『トラつば』続編であるところの、おそらくは山田よねと轟太一が軸となるスピンアウトを、とてもとても楽しみにしています。今からもう、円盤化をも期待しています。
