最初で最後。
いつものように言葉を紡ぐこの場所に、今日はひとつ、私にとって言葉以上に大切な、ある「映像」を置いておきたいと思います。
それは、私が被写体とは別の、テレビの仕事をしていた頃に出会った、同い年のカメラマンの彼と作った作品です。
彼は自分のバンド活動も熱心にしている人で、ある日、私にこう言ってくれました。
「saraちゃんじゃないと撮れない」
その真っ直ぐな言葉が嬉しくて、私たちは真冬の深夜、凍えるような空気の中でカメラを回し始めました。
夜通し、いい作品を作るために何度もイメージのすり合わせをしました。
たまにぶつかり合ったりもありました。私が怒ってしまうこともあったけれど、彼はいつも上手くかわしてくれて。
ただ、お互いの目指す着地点はいつも同じでした。
彼の良かったところは、ただのアイディアマンで終わらないところ。
0から1を作るのが得意。
また有言実行で、行動が早く信頼出来ました。
どんなマイナスなことも、全部ポジティブに変換してくれる人でした。
対する私は、自分の気持ちを言語化するのにどうしても時間がかかってしまうタイプ。私の意見を聞いているのか分からないくらい(笑)、自分のアイデアに向かって全力で突っ走る彼とはある意味で真逆だったけれど、だからこそすごく助けられていたし、心地よかったのを覚えています。
それに彼は、冗談抜きで「めちゃくちゃクオリティ高く出来た!」と、自分の作品に対して絶対的な自信を持っていました。自分で作ったものにそれだけ誇りを持てる彼の姿勢を、私は心から尊敬していました。
凍える体を震わせながら、夜が明けて朝の光が差し込んでくるまで。
撮影が終わったのは深夜から早朝。
ハイテンションだったのを思い出します。
お互いの熱量だけで、ただ夢中で駆け抜けたあの時間は、今でも私の肌に鮮明に残っています。
彼が見つめたレンズの向こうにいた、あの頃の私。
彼が鳴らしていた、大好きなバンドの音楽。
まさかそれが、彼と作った「最初で最後」の作品になってしまうなんて、あの時は思いもしませんでした。
その後、彼は不慮の事故で、突然この世界を旅立ってしまいました。
あまりにも突然のことで、信じられない気持ちでいっぱいだったけれど、彼の事故の後、バンドメンバーの方から「よくあなたのことは聞いてました」と連絡がありました。
これが、彼にとって最初で最後のMVになったと。
そう言って教えてくれたメンバーさんからの彼の姿は、次に会ったときには言うことがコロコロ変わっていたという話。それどころか、まだ1作目が出てすらいないのに、もう2作目の計画を立てていたそうです(笑)。
私も聞いてはいましたが。
それを聞いたとき、悲しさよりも先に「あはは、めちゃくちゃ彼らしいな!」って、なんだかすごく愛おしい気持ちになったんです。
彼はもういないけれど、彼が遺した可笑しさや、自分の作品への真っ直ぐな誇り、突っ走るほどの熱量は、今もメンバーのみんなの中に、精度高く生き続けているんだな、と救われた気がしました。
彼が遺してくれたこの映像は、彼と私が確かにあの冬の夜を全力で生きた、世界にたった一つの形見のような存在です。
時間が経った今だからこそ、彼が私を切り取ってくれた美しい一瞬と、彼が愛した音楽を、私が一番大切にしているこの場所で、たくさんの人に届けたいと思いました。
ちなみに、ここで流れる真っ直ぐな歌声も、映像の編集も、全部彼自身が手掛けたものです。生前、彼が冗談抜きで「めちゃくちゃクオリティ高く出来た!」と誇っていた彼の才能を、耳と目で感じていただけたら嬉しいです。
もしよかったら、ほんの少し、私たちのあの日を覗いてみてください。
バンバン宣伝して欲しいと言われていたのを思い出しました。
なのでこのタイミングで。
音楽大好きな私がミュージックビデオに出るのは大きな夢のひとつでした。
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