猫に導かれた家
── どうしよう。
外猫の"みゃあ"が見当たらない。
探してもどこにもいない。
まだ子猫。
そして、付近には大量の吐物。
嫌な予感がする…。
少し範囲を広げて探すが、いない。
もう一度、いつも居る場所を丁寧に探す。
── いた。
近所の人が「もう使わないから」と
猫用に置いていってくれた犬小屋の奥に
その小さな体を横たえていた。
いつものお転婆な眼差しは消え、
目はうつろだった。
「みゃあ、病院に行くよ。」
考えている暇はなかった。
小さな命が尽きようとしているかもしれない。
"みゃあ"は、
当時勤めていた会社の自動販売機の下で、大きな声で鳴いていたところを保護した三毛の女の子。
"みゃあ"という名は、社長の娘さんがつけたもの。
社長の提案で、里親が見つかるまで会社の敷地内で同僚と面倒をみることに。
縁

だいぶ良くなってきた頃の写真
病院に行くと、すぐに点滴になった。
何か、悪いものを食べたらしい。
その日から一週間、毎日点滴に通った。
獣医から「もう大丈夫」とお墨付きをもらう。
でも、食欲が全く戻らない。
ネットで調べたり、人に聞いたりしていろいろやってみるもあまり効果が出ず。
もう相談できる人もいなかったので
そのときたまたまオンラインの仕事でつながっていた人に話してしまった。
すると、その彼は実家で猫を飼っていて、すぐに的確なアドバイスをくれた。
話してみて良かった。
心底そう思った。
その後、"みゃあ"は無事に回復し、
なんと、名付け親でもある社長の娘さんご夫婦が里親になってくれた。

よかった。
本当に良かった。
ずっとのお家で幸せになるんだよ。
それから数年が過ぎ──。
わたしは、あの時的確なアドバイスをくれた彼と二度目の結婚を決めた。
導かれるままに

彼は、子どもの頃から実家で猫を飼っていて、猫がいない生活は考えられないと言う。
わたしは、猫を飼ったことはない。
でも、猫が大好きで「飼えたらいいな」とずっと思っていた。
もう答えは出ている。
猫を迎えたい。
「だったら、まずは家を買おう。」
彼のその一言で動き出した。
そうして決めた今の家は、夫婦二人で住むには少し広い。でも、敢えてその広さを選んだ。
まだ見ぬ猫のことを考えて、家具はできるだけシンプルなものにした。
すべてを整え、保護猫カフェへ。
季節は、ちょうど春から夏へ向かっていた。
春に生まれたたくさんの子猫たちが里親を待っていた。
── え。こんなたくさん?
ここから選べっていうの?
どの子も本当にかわいい。
選ぶなんてできないな。
そう思ったとき、
「みゃあ~~~!」
大きな鳴き声。
しきりに鳴いている。
わたしは、その鳴き声の主を探しながら、あの"みゃあ"を思い出していた。
声の主は三毛ではなく、真っ黒な子猫だった。
わたしを真っすぐに見つめて鳴いている。
── そうか、選ぶんじゃないんだ。
選ばれるんだ。
数日後、この子の兄弟も一緒に我が家へお迎えした。
リビングをひとしきり探検したあと、すぐに二階へと範囲を延ばしていく。

猫を迎えて11年。
この住まいには、2匹それぞれのお気に入りの場所がある。
リビングの、吹き抜けから
さんさんと陽の光が入るソファの上。
自然豊かな景色が一望できる、和室の窓辺。
どれも猫目線で選んだ住まいの一部。
今日も相変わらず、大きな声で「みゃあ~~~!」とアピールしてくる。
きっと"みゃあ"が導いてくれたのかもしれない。
黒猫兄弟との縁も。
夫との縁も。
そして、この住まいも。
あの鳴き声が、いまもこの家に響いている。
投稿企画「この住まいに決めた理由」に参加してみました。
フォトエッセイを書く時間は楽しいですね。
読んでくださりありがとうございます。
#この住まいに決めた理由 #猫好き #フォトエッセイ #エッセイ #猫のいるしあわせ
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 