世界基準の安保論がスッキリわかる本 高橋洋一

『世界基準の安保論がスッキリわかる本 高橋洋一』読了。
戦争に関する基礎データを分析し、戦争のリスクを減らす為の安保論が纏められています。論理が一貫して明快。図解も多様し、とても理解し易すく、ためになる内容でした。流石は高橋洋一さんの著書です。
戦争確率についての定量的議論。
— 高橋洋一(嘉悦大) (@YoichiTakahashi) May 17, 2022
【図解】-図25枚で世界基準の安保論がスッキリわかる本-高橋-洋一 https://t.co/7wqNtHjZv2
2015年成立した安保関連法案のドタバタ劇が、いかにまともな議論が出来ていなかったか、左翼政党の追及が現実の国際関係を無視した「お花畑」的な憲法論に終始していたか、その主張が逆に戦争リスクの増加に繋がっていたのか、手に取るように分かります。
安保関連法。法案の審議過程では与野党の間で様々な論戦や場外戦が繰り広げられた。しかし国会や既存の大メディアでは、リアルな国際政治・関係論や安全保障の議論が闘わされる場面は殆ど無かったように思われる。主に闘われたのは、現実の国際関係を無視した「お花畑」的な憲法論や、重箱の隅を突くような細かい法律論ばかりだった。P4
左派勢力の言う、憲法9条を唱えていれば平和でいられるなどという、何の根拠もない議論は論外だ。安保関連法を推進した政府・与党側も、反対した野党側も、ともに目指していたのは平和である。「戦争ができるようにするための法律だから、戦争法案だ」などとレッテル貼りし、未だにレッテルを貼り続けている野党もあるが、戦後の日本に、本気で戦争をしたいと考えている政党などあるわけがない。目指すものは同じで、これなら平和を実現できる、と考える方法が違うだけだ。だから、どちらの方法がより日本を平和にできるのか、観念的ではない現実的な議論で競うべきであったろう。P5
第二次大戦後、2007年までの全ての戦争について、どの地域で発生したか地域分布を確認すると38の戦争のうち実に4割近い15の戦争が(中東を除く)アジア地域で発生している。第二次大戦後は、アジアは世界の中でも断トツで戦争が多い地域なのだ。P20
戦争の基礎データとして使用したウェブサイト[戦争の相関プロジェクト]
民主主義国であれば、その国の行動は基本的に選挙で選ばれた政治家の合議によって決定される。政治家は常に国民の視線を意識する必要があるし、三権分立や二院制のように、権力機構が互いをけん制する仕組みが政治体制に組み込まれているので、そもそも戦争をするという極端な行動が選択されにくい。逆に独裁国家などでは、こうした権力の相互抑制機能や選挙が存在しないため、戦争をするという極端な行動が採用されやすい。一人しかいない独裁者や、一党しか存在しない独裁政党が一旦開戦を決めてしまうと、それを止める仕組みが体制内部に存在しないからである。P26-27
ブルース・ラセットとジョン・オニールが膨大な戦争データを使って実証分析をしたところ「民主主義国家同士はまれにしか戦争しない」という結論が出て、民主的平和論が正しかったことが証明された。その研究の集大成が、両氏によって2001年に出版された、
"Triangulating Peace: Democracy, Interdependence, and International Organizations" という本だ。
日本国内では、よく左派の言論人が「むやみに隣国を敵視するのはよくない」という素朴な平和論を言うが、民主的平和論を知っていれば、目と鼻の先の距離に非民主主義国家が存在するという事実だけで、中国と北朝鮮を特に警戒する十分な理由となるのである。P29
欧州や北南米の国では青く分類されている国が多く、地域全体で民主化が進んでいる。対して、アジア地域や中東地域、さらにアフリカ地域では未だ権威主義的な国が多く、民主化があまり進んでいない。民主度の低い国ほど戦争をおこしやすいとされる。日本周辺は世界の中でも危険な地域だということが分かる。P32-P34
[民主国家度合]

航空自衛隊のスクランブル。尖閣諸島を巡って中国が軍事的圧力をかけてきている。P35
空自のスクランブル1004回、対中国機が7割…昨年度は情報収集機・哨戒機の飛行増える

ラセットとオニールの「平和の五要件」
戦争のリスクを減らすには以下の五要素が重要
①有効な同盟関係
リスク減少効果:40%
戦争を仕掛けようとする国が思い留まる可能性が高くなる。対外的な抑止力が高まる。
②相対的な軍事力
リスク減少効果:36%
互いの国の軍事バランスが崩れると、軍事力が優位の国が「いま戦ったら、勝てるんじゃないか?」と考える可能性が高まる。
ただあまりに大きな差がついている場合には、劣位にある国が優位にある国に対して属国化するので、かえって戦争のリスク
が低下する場合がある。
③民主主義の程度
リスク減少効果:33%
どちらも民主主義国だと滅多に戦争しない。一方の国が非民主主義国だと戦争のリスクが高まり、双方ともに非民主主義国なら
戦争のリスクはさらに高まる。
④経済的依存関係
リスク減少効果:43%
貿易などで経済関係が強まっている相手と戦争を始めると、開戦した途端に自国も大きな経済的ダメージを負うことになる。
経済的な結びつきが強い国とは戦争をはじめにくい。
⑤国際的組織への加入
リスク減少効果:24%
国際憲章で武力の行使による威嚇を禁止している。戦争の違法かを強く意識した国際憲章なので、加盟国は戦争しづらくなる。
P42-P51
第二次大戦後、日本では集団的自衛権を保持しているが、憲法上行使は許されないと政府が国民に説明してきた。
しかし周辺の状況が緊迫してきて、現実に合わない国内向けの時代遅れな説明を解釈変更で一部修正し、アメリカとの同盟関係がより実効的になるよう、法整備を行った、というのが2015年の安保関連法の本質だった。P56-57
野党の民進党や共産党は、未だに安保関連法の廃案を主張し、集団的自衛権の行使をすると戦争のリスクが高まると主張している。しかし過去の戦争データの研究では、既に述べたように同盟関係の強化は戦争のリスクを減少させると証明されている。P58
日本の左翼の言論人は、集団的自衛権の行使容認にばかり反対するが、仮に日本が集団的自衛権の行使容認を撤回したら、日米安保条約が実効的でないと白状したものと諸外国は受け止めるだろう。それは同盟関係の弱体化に他ならない為、国際政治・関係論から見れば戦争リスクの増加となる。この点では、野党の多くは主張が真逆になってしまっているのだ。P60-61
諸外国は日本がこれまで集団的自衛権の行使をしてこなかったとは、全く考えていないことをまず知っておきたい。現実として日米安保条約を結び、米軍に日本国内の基地を提供していること自体、集団的自衛権の行使をしていると捉えている。国際法では一般に、同盟関係を結ぶこと自体、集団的自衛権の行使を前提としていると考える。さらに米軍への基地提供まだ大々的に行っている日本は、立派に集団的自衛権を行使していると考えれているのだ。P63-65
国連軍への全面協力は集団的自衛権の行使ではないのか?
東京都の米軍横田基地内には、国連軍後方司令部がおかれており、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、フィリピン、タイ、トルコ、アメリカ、イギリス、イタリア、南アフリカの11カ国が日本と国連軍地位協定を締結し、そのうち8カ国が司令部としての使用をいまも続けているとされる。P66
国連軍に協力し、国連の体制にビルトインされている日本が、国連憲章によって認められ、日米安全保障条約でも明記されている集団的自衛権について権利を持っているだけで行使はしない、許されないなどと言っても国際社会では通用しない。「既に、思い切り行使しているじゃないか?」と返されるだけだ。していないなどと強弁すれば、かえって不信感を抱かれる可能性さえある。P67-68
民意や少数意見に配慮していないと左派系のメディアが批判したことがあったが、そもそも「強行採決」なる言葉は、欧米にはない日本のマスコミだけの独特な表現である。普通に考えれば、単なる民主主義のプロセスだ。集団的自衛権の行使容認の方針について、安倍政権は以前から公約やマニュフェストで明確に主張しており、それで3回の国政選挙を戦い、国民の支持を受けて勝ってきた。それなのに、集団的自衛権の行使容認を諦めていたとしたら、むしろ公約違反で民意に反することになってしまう。国政選挙は民主主義制度の下で民意を示すためのもっとも基本的、かつ最重要とされる手段である。そのときどきの世論調査も重要だが、飽くまで参考情報に過ぎない。自社の世論調査では国民の大半が反対だから、急いで法制化する必要はないと多くのマスコミが主張したが、安倍政権下で行われた3回もの国政選挙の結果を無視することなど、できる訳がない。P84-85
他にも、それまでの内閣法制局の見解を、内閣が閣議決定で変更したことが従来の慣例を破るものであり、立憲主義の精神を犯すものである、という反対論があったが、これなどはもはや意味不明である。内閣法制局という政府の一部局に過ぎない官僚組織が、立法府で大きな権威を持ってきたこと自体が官僚支配の象徴であり、そもそも異常な状態である。内閣法制局の役割は、総理に法の解釈について意見具申をするところまでであって「集団的自衛権を巡る憲法解釈の変更」などという大それた権限を掌握できるポストではない。また、そうあるべきでもない。ところが、一部の官僚があたかも自らを立法と司法の上位に立つ存在かのように、法案づくりと国会の通過、さらに法律の解釈に至るまで関与しようとしてきた歴史があった。その背景には、国会議員が本来の仕事である議員立法などの立法業務をせず、官僚に丸投げにしてきた実情がある。実質的な立法府の形骸化だったのだ。そんな官僚支配体制↓での慣例を、立憲主義の体現であるかのように有難がった人達は、安保関連法に反対したいあまり、自ら官僚に支配されることを望んだのと同じである。P86-87
集団的自衛権について、日本のマスコミや識者の間では、行使を容認したことで戦争に巻き込まれるリスクが上がる、という考え方もある。特に同盟国であるアメリカについて、現在の世界では唯一の覇権国であることから、日本の意思に反してアメリカの戦争遂行に協力させられるのではないか、という論調が目立つ。
すでに見て来たように世界標準の国際政治・関係論では、同盟関係の強化で戦争のリスクが下がると考える。そのため集団的自衛権の行使容認により日米同盟関係が強化されれば、戦争のリスクは低下すると判断される。より戦争に巻き込まれにくくなる、ということだ。P91
戦争に際して、アメリカは遠方の同盟国にも協力を求めることがあるが、参戦を無理強いすることまではない。実際にケース・バイ・ケースでアメリカの要請を受け入れたり、断ったりしている。日本だけがそれができず、アメリカの言いなりになるしかないというのは、論理的な話ではないだろう。
集団的自衛権を行使して同盟国の戦争に参加するかどうかは、政治上の究極の判断として各国が独自に決定するものであり、たとえアメリカであっても相手国がノーと決定したらその判断に従わざるを得ない。どの国にも主権があり、アメリカの同盟国に多い民主主義国であれば、その決定は民意もある程度反映していると考えられる。民主主義の盟主を自認するアメリカは、そうした決定を尊重せざるを得ないのだ。P95
戦後長らく、防衛費はGDP1%以内という事実上の枠があり、さらに専守防衛の指針があったため、攻撃的な兵器の調達には大きな制約があった。そのため、海外での軍事行動にちて、アメリカから大きな期待をされることはまずない。遠い未来にはともかく、地球の裏側まで派兵して戦闘行為までさせられるなどということは、しばらくは現実的にあり得ない話である。
戦闘が行われていない地域での後方支援任務や、海上自衛隊が特に得意としている掃海能力を生かした機雷掃海、あるいは戦後の復興支援などで協力を求められることは有りうるし、これまでにも実際に要請されてきたが、せいぜいその程度であろう。P96
戦後のアメリカは同盟条約を結んだ自らの同盟国に、第三国からの侵略を殆ど許していないこともわかる。集団的自衛権は抑止力があるので、自ら仕掛けていかないのであれば、戦争に巻き込まれる可能性が低くなると考えるのが国際常識である。P97
徴兵された兵隊は現代戦では「足手まとい」
集団的自衛権の行使容認に関しては、従来の憲法解釈を変更したことをもって、将来に徴兵制の実施に繋がる恐れがある。とする批判もある。しかし、これも世界各国の徴兵制の実施状況と比較すると、時代遅れも甚だしい話だとすぐに分かる。
そもそも、徴兵制は現代の軍隊や安全保障においては、あまり必要とされていない。日本人の持つ戦争イメージは第二次大戦で止まってしまっている場合が多いが、その後、兵器技術が格段に進歩したことから、個々の軍人に求められる技術や知識は高度化している。専門性に欠ける軍事技術の素人を数年程徴兵したところで、兵士として役に立たないのだ。もっとはっきり言えば、現代戦では「足手まとい」にしかならない。P109
各国の軍事制度
いざという時には集団的自衛権を行使し、みんなでお互いを守る約束をしているNATOの加盟国では、22対6というかなりの割合で徴兵制が取りやめられているが、集団的自衛権は活用せずに自国のことは自国だけで守るNATO非加盟国では1対4の高確率で徴兵制が維持されている。
こうした世界の現実を見れば、集団的自衛権の行使を容認すると日本で徴兵制が復活するという主張は、よくて「的外れ」、悪くいえば「悪質」な主張と言わざるを得ないだろう。集団的自衛権に頼らずに個別的自衛権だけで防衛を行おうとすると、むしろそのほうが徴兵制になる可能性が高いのである。安全保障の関する議論ではいつもそうなのだが、左派の人達の主張は現実に即していない。P115
防衛コストの面でも、集団的自衛権を使えたほうが、個別的自衛権のみで国の防衛するよりずっと安上がりだ。
日本をどのように防衛するか、政治的にはいろいろな立場がある。ひとつは非武装中立論で、武力を使った防衛はそもそもしない、という立場だ。国連などの場で外交努力はするが、それでも攻められたら素直に降伏して占領される。その代わり、虐殺などはできるだけしないようにして貰おうという「お花畑論」だ。筆者にとっては眩暈がするような馬鹿げた主張だが、未だこうした主張をする人は結構多い。
現在、日本の主な仮想敵国である中国や北朝鮮は共産主義国家だが、共産主義を奉じた国が、過去どれだけ大量の人を殺してきたか、歴史を少しでも知っていればこんな主張は普通できない。P119
日本の集団的自衛権行使に反対しているのは中国・韓国と一部の平和ボケ日本人だけ!諸外国の多くが、既に賛同の意向を表明している。P134
同盟国のアメリカは当然のこととして、ここ数年のニュースを筆者が調べただけでも、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、オーストラリア、フィリピン、シンガポール、ベトナム、マレーシア、インドネシア、バングラディシュ、ミャンマー、モンゴル、インドなどが賛同のコメントを出している。また欧州連合やASEANなどの国際機関からも、同様に賛同のコメントが表明されている。世界では、日本の集団的自衛権は広く容認されているのである。
これは考えてみれば当然のことで、世界の多くの国や、どこか別の国となんらかの同盟関係を結んでいる。なぜそうするのかと言えば、そのほうが戦争のリスクを減らせると考えているからだ。P136
不可解なのは、韓国の反応である。
日本には、米軍や国連軍が駐留していることを既に述べた。国連軍は、米軍の基地内に司令部を置いている。もし、朝鮮半島で有事が怒れば、これらの米軍基地は国連軍地位協定によって、日本政府の同意を得て使用されることになっている。
つまり、その際の日本国内の米軍基地使用については、自動的に認められるわけでなく、日本政府との事前協議にかかる訳だ。
ここで、韓国が集団的自衛権の行使を認めないとなると、事前協議で日本が基地使用に同意することもできなくなってしまう。他国での戦争に自国内の基地使用を許すことは、集団的自衛権の行使にほかならないからだ。
特に日本に国連軍として要員を置いている各国では、朝鮮半島が有事になれば、日本がほぼ自動的に基地利用を認めるはずだと思っている。韓国が日本の集団的自衛権行使に反対していると聞いたら、自分の首を絞めるような話なので、さぞびっくりすることだろう。残念ながら、韓国のロジックは最初から破綻しているのである。P140-141
アメリカは第二次大戦後にも数々の軍事介入を行ってきた歴史がある。これら軍事介入では、介入された国は全て核兵器を持っていない。結果、殆どの国はボコボコにやられていて、例外と言えるのはベトナムぐらいなものだ。
逆に言えば、アメリカは原則として勝てる相手にしか攻撃は仕掛けないと言えるので、金正恩は核さえ持っていれば、アメリカは攻撃してこないはずだと思い込んでいるのだろう。P149-150
https://fissilematerials.org/library/gfmr15.pdf
各国の保有するプルトニウム量

共産党の藤野政策委員長がテレビ番組で「軍事費は戦後、初めて5兆円を超えた。人を殺すための予算ではなく、人を支え育てる予算を優先する改革が必要だ」と述べた。後日この発言は取り消されたのだが、さすがに驚いたものだ。事実を言えば、日本の自衛隊は他国の軍隊と異なり、創設以来、人殺しをしていない。むしろ災害救助で多くの人を助けている。「人を殺すための予算」というのは、共産党のホンネが出たのだろうが、流石にこの発言は酷い。自民、公明、おおさか維新などの出演者が、即座に良識的な反論をしていた。P180-181
