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第1回京都会議―「価値多層社会」の実現に向けて―

「価値」を問い直す、世界から600人の集い

2025年9月23~24日、国立京都国際会館において「第1回京都会議」が開催されました。
主催は一般社団法人京都哲学研究所、共催に京都大学。
京都哲学研究所共同代表の出口康夫氏(京都大学大学院文学研究科 研究科長・教授)、澤田純氏(NTT 取締役会長)、京都哲学研究所シニア・グローバル・アドバイザーのマルクス・ガブリエル氏(ボン大学 認識論・近代および現代哲学講座教授、国際哲学センター所長、科学思想センター所長)をはじめ、哲学や研究者、産業界や行政、文化芸術分野からも参加があり、世界18カ国延べ600人が集う国際会議となりました。
会議の中心テーマは「価値多層社会」の実現。AI時代が到来する一方、分断が進む社会において、経済合理性だけで測れない「価値」をどう位置づけ、共に生きる基盤を築くのか? その問いに、それぞれの立場の人たちが集い議論を行いました。主なタイムテーブルは以下の通りです。

左から出口教授、澤田氏、ガブリエル氏

■1日目
【基調講演】
①出口 康夫 ②マルクス・ガブリエル
【Part I】価値をめぐる根源的問い
 パネルディスカッション①「価値多層性からの出立」
 パネルディスカッション②「AIが問い直す『人間』」
【Part Ⅱ】AI時代における社会の再設計
 ランチセッション会場Ⅰ:「技術変容と企業の未来」
 ランチセッション会場Ⅱ:「信頼とガバナンス」
 ランチセッション会場Ⅲ:「民主主義を再構築する」
【Part III】価値共創の地平
 会場Ⅰ:「技術と人間の共生」
 会場Ⅱ:「文化の多様性と価値の普遍性」
【Part Ⅳ】価値の実装
 パネルディスカッション③「価値から考えた産業界の役割と未来」

■2日目
【Part V】価値の創造と表現
 パネルディスカッション④「創造的跳躍:芸術・文化から価値へ」
【Part VI】未来への展望
 パネルディスカッション⑤「ネットワーク・オブ・ネットワーク」
 パネルディスカッション⑥「新たなグローバルアジェンダへ向けて」
 
基調講演では、出口教授は「価値」とは私たちの物理的な行動に特定の方向性を与える矢の役割だとして、AI時代に問い直す意義について説明。また、マルクス・ガブリエル氏は、AI時代において我々は『道徳的進歩』をしていくべきだと強調しました。

Part Iでは、ある登壇者が「AIは人間を模倣する存在として進化している。では人間の本質は何か。哲学が果たすべき役割は、今こそ大きい」と投げかけ、そこから議論が熱を帯びていきました。
 
初日はAIと人間、企業と技術変容など、社会と産業の根幹に関わるテーマが並びました。
大阪大学の石黒浩教授は、人型ロボットの実例を交えながら「人間とAIの境界」を問い直し、「一番重大な違いは好奇心」だと話しました。東京藝術大学の日比野克彦学長は、「AIは正解でも不正解でも、瞬時に答えが出せるが、人間はわからないことを、わからないままにしておくことはできる」と指摘。また、企業の代表は「効率化だけでなく、人間の尊厳や創造性を守ることが経営の核心になる」と発言しました。
セッションに参加した企業経営者からは、「普段は経済や市場の視点でしか考えないけれど、今日は“そもそも何のために技術を使うのか”を考えさせられた」といった声が聞かれました。

2日目は文化や芸術に焦点が移り、舞台芸術家や哲学者が「表現は社会の価値をどう映し出すか」を議論しました。
若手研究者の一人は、「哲学の議論が“机上の空論”で終わらず、芸術や企業活動、政治とつながっていることを実感した。世代を超えて考えたいテーマ」と感想を語っています。
閉会に向けては、参加者から「継続的なネットワークづくり」の必要性が繰り返し指摘され、価値観をめぐる対話の継続が強調されました。

本会議については連日メディアにも取り上げられ、哲学と産業界の対話にも注目が集まっていました。

京都大学は京都哲学研究所と包括連携を締結しており、京都大学成長戦略本部と京都大学人と社会の未来研究院が窓口を務めています。
今後、成長戦略本部と人と社会の未来研究院は、2025年11月17日(月)に一般向けアフターイベントも企画しており、専門家の枠を超えて、広く市民を巻き込んで議論を展開していく計画です。

本会議を終えて、ある参加者はこう語っています。
「“価値”を議論することは、すぐに答えが出る話ではないが、京都で始められたことに意味がある。継続し、社会に実装していくことが次の挑戦だ」。
 
第1回京都会議は、未来の社会像を描き出す第一歩となりました。京都から発信された「価値多層社会」というキーワードは、これからどのように広がり、具体化していくのか? この活動を追い続けていきます。