【前編】BIO International Convention 2025-京都大学ブースのkey visual誕生物語①
「BIO International Convention」に、2024年、京都大学がはじめて出展した。
「BIO International Convention」とは、創薬、ヘルスケア、環境関連など、バイオテクノロジー関連の1,000を超える企業や団体が会員に名を連ねるバイオ業界団体「BIO(Biotechnology Innovation Organization)」が主催する展示会で、初開催からまもなく四半世紀を迎えようとしているバイオテクノロジー分野の世界最大規模の展示会である。
2024年は大学発スタートアップを生み出すためのプラットフォームである関西スタートアップアカデミア・コアリション(略称、KSAC)と共に、オンラインプラットフォームであるStartup Hub(現・Made in Campus)を介した研究者のシーズやスタートアップの紹介、ネットワーキング活動などを行い、一定の成果と手応えを得た。
この出展を主導したのが、2024年4月、大学の知の価値化を推進するというミッションを掲げて発足した京都大学成長戦略本部だ。同本部において研究成果の活用や出口戦略を担う「イノベーション領域」が中心となり、ライフサイエンス分野に優れた実績と高い価値を有する京都大学の強みを押し出し、医学領域における研究成果の実用化をめざす取り組みとして初出展に臨んだ。
そして2025年、さらにチームを拡大してBIO International Convention 2025に挑む。今回、タッグを組むのは、2024年から始動した「大学発新産業創出基金事業 –スタートアップ・エコシステム共創プログラム– 全国ネットワーク構築支援(通称、NINEJP)」である。全国9つの大学・プラットフォームが連携し、革新的な大学発スタートアップの創出をめざしたNINEJP が一丸となり、大学発ベンチャーの紹介、海外展開に向けたマッチング機会や研究シーズの紹介を通した共同研究の創出などを狙う。
京都大学は NINEJP において「海外拠点の高度活用」を担当しており、各プラットフォームが国際展開を自律的に推進できるよう、共通基盤の整備や専門人材の育成、国際マッチング機能の構築などを推進する立場にあり、BIO International Conventionへの出展についても、このような役割を果たすことが期待されている。
京都大学にとっては多くの責務と期待を背負った出展だが、2024年に参加したスタッフたちが腐心したのは、数あるブースの中にあって、来場者たちにいかにすれば自分たちのブースに目を留めてもらうことができるか、ということであった。どれほど入念な準備をしたところで、訪問してもらえないことにはコミュニケーションが何も始まらない。
文字中心のブースが多い中で、京都大学は京都らしさをアピールするために着物を着たキャラクターイラストを用いたビジュアルでブースをつくった。結果、ブースに目をひかれる来場者が続出し、多くのマッチング機会を得ることにつながった。
しかしながら用いたイラストには「京都大学の医学領域」を象徴するような明確なビジョンや戦略があったわけではない。ビジュアルをみれば「京都大学のライフサイエンス領域」であるというイメージを植え付けるためのブラッシュアップしたビジュアルをつくることができれば、ネットワーキング活動においてさらなる成果を得られるのではないかという確信が先の経験で芽生えたという。

「BIO International Convention 2025」の京都大学ブースを夢に描きながら、「京都大学」「医学領域」という2つのキーワードをもとにした「キービジュアル」作成への旅が、2024年7月頃から始まった。
キービジュアル作成プロジェクトを率いた鈴木忍特定教授は言う。
「はじめて京都大学に来てキャンパスを歩いていた時に、立ち並ぶ建物を見て、ふと『生物』って文字が脳裏に浮かんだんです。これって、“せいぶつ”、“いきもの”、そして“なまもの”とも読めるわけじゃないですか。学術的なニュアンスの『せいぶつ』、そして躍動感を感じる『いきもの』、さらに『なまもの』になると、なんだかウヨウヨっとして楽しそう、おもしろそう、みたいな感覚。この感覚を京都大学に対して私はずっと持っていて、今回のブースのビジュアルづくりの話が出た時には真っ先にこの言葉を思い浮かべました。「生物」のように、いろんな要素が詰まっていて、なんだかワクワクするようなブースにしたいと思ったんです」

とにもかくにも、前述のように、ブースに少しでも長く滞在してもらうために、「目をひく」「訪れる」「留まる」「マッチングする」という一連の流れに導いてくれるビジュアルをめざした。
さてしかし、いったいそれは何なのだろうか。
「京都大学」を象徴するビジュアルといえば、内部の人間として普通に浮かんでくるのは「時計台」や時計台前の「クスノキ」である。たしかにそれらは、メディアやSNSで頻繁に目にするものではある。
しかし、インタビューを通して得た発言のコンテクストを分析して明らかになったのは、学外の方々が京都大学に描くイメージは、時計台前の「クスノキ」などではなく、プロジェクトメンバーが想定していたものとは大きく違うということだった。ならば、先入観なく自由に「京都大学のイメージ」を創造していただけるような外部のデザイナーに、自分たちの思いやイメージを伝えてビジュアルを作成していただこう、という流れに傾いた。
キービジュアル作成のためのプロジェクトは、鈴木に加え、京都大学成長戦略本部から大槻弥登、小河布記子、そして京都大学の子会社である「京大オリジナル株式会社」より中澤舟(現:京都大学成長戦略本部連携研究員)、高田幸絵の計5人で構成され、デザイナーに何をどう伝えるか、資料として何を用意するか、協議や検討を周到に重ねた。

「パッとみて楽しそうでワクワクする感じ、そして探求心や冒険心をあおるもの、さらにビジュアルのどこかにキャラクターを潜ませて探してもらうといったような遊び心。この3つを満たすビジュアルであってほしい」
BIO International Convention 2025出展に向けて、キービジュアル作成プロジェクトメンバーは、そんな想いを携え、このキービジュアルの作成を担当いただくことになったデザイナー・田村育歩と対面する・・・(中編へつづく)
<参考>
関西スタートアップアカデミア・コアリション
https://ksac.site/
大学発新産業創出基金事業 –スタートアップ・エコシステム共創プログラム– 全国ネットワーク構築支援(通称、NINEJP)
https://ninejp.org/ja
