ヴォイニッチ手稿:現代のAIでも解読不能。高級車数台分のコストがかけられた15世紀の謎の奇書
世界中の天才暗号学者や最先端のAIが束になっても、「1文字も」読めない本が存在します。
イェール大学の図書館の地下深くに厳重に保管されているその本には、未知の文字がびっしりと書き込まれ、この世に存在しない奇妙な植物、未知の星座、そして緑色の液体に浸かる裸の女性たちの不気味で魅力的な挿絵が描かれています。
その名は「ヴォイニッチ手稿」。
オカルトやネットの都市伝説ではありません。実在する歴史的遺物でありながら、誰一人として内容を理解できない「本物のオーパーツ」です。
狂気のスケール:この本に隠された「異常なコスト」
この本の謎に迫る前に、一つ知っておくべき重要な前提があります。それは、この本が作られた15世紀初頭における「本の価値」です。
当時は現代のような紙ではなく、仔牛や羊の皮を薬品で処理して引き伸ばした「羊皮紙」が使われていました。ヴォイニッチ手稿は現在約240ページ(120枚の皮)が残っていますが、これだけの分量を作るには数十頭から百頭近い動物の命が必要になります。現代の感覚で言えば「高級車がポンと買えるほどの莫大な資金」がなければ、これほどの羊皮紙を個人的に調達することは不可能です。
つまり、よく言われる「精神を病んだ貧しい村人が、森の奥でデタラメな記号を書きなぐった」という説は、経済的な理由から完全に否定されます。
さらに不気味なのは、これほど高価な素材であるにもかかわらず、文字に「ためらい傷」や「書き直しの跡」が一切ないこと。誰も読めない約3万5千もの単語が、まるで一筆書きのように流暢に書かれているのです。
完璧すぎる容疑者「ヴォイニッチ」
莫大な資金と狂気じみた執念で作られたこの奇書。実は長い間、「一人の男による精巧な詐欺(フェイク)ではないか」と疑われていました。
その男こそ、この本に名を冠する発見者、ウィルフリッド・ヴォイニッチです。
1912年、イタリアの修道院でこの本を発見した彼は、ただの古本屋ではありませんでした。若き日には革命運動に参加し、偽造パスポートを使ってシベリアから脱走したという数奇な経歴を持つ、超絶有能で胡散臭い人物だったのです。
彼はこの本を「世紀の発見」として大々的に宣伝し、巨万の富と名声を得ようとしました。そのため、多くの歴史家や学者が「古い羊皮紙をかき集めて、ヴォイニッチ自身が自作した捏造品だろう」と冷ややかな目を向けていたのです。
科学が突きつけた「本物」の証明
しかし、現代科学がその「捏造説」を完膚なきまでに叩き潰します。
2009年に行われた炭素年代測定により、使われている羊皮紙が「15世紀初頭」のものであることが確定しました。さらにインクの分析から、羊皮紙が新しいうちに文字が書かれたことも判明し、彼が後から書き足した線も消えました。
極めつけは「ジップの法則」です。一見デタラメに見える文字列ですが、コンピュータ解析の結果、高度な「自然言語の数学的法則(単語の出現頻度の法則)」を満たしていることが分かりました。この法則が発見されたのは1930年代。1912年の時点で、ヴォイニッチがこの法則を知り尽くし、計算しながら240ページを書き上げることは人間の頭脳では不可能です。
さらには、17世紀の学者たちがこの本について議論している本物の手紙まで別の図書館から発見されました。彼は詐欺師ではなく、「本当に500年前のヤバい本を引き当てたラッキーな古本屋」だったのです。
現代のAIすら敗北する「暗号の壁」
「昔の人は無理でも、今のAIなら一瞬で解けるのでは?」
誰もがそう思うでしょう。しかし、最先端の言語モデルですら、この本の前では沈黙してしまいます。
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