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元国語教師が選ぶ!国語教材キャラワールドカップ

作家ワールドカップなるものが、note界隈で流行っているらしい。

きのころさんが文豪たちをサッカー日本代表に選び、ポジションを決める記事を書いていた。

夏目漱石が司令塔、太宰治がワントップ、宮沢賢治がファンタジスタ。なにそれ。楽しい。

私は前回、その記事を読んで「森鴎外、監督にしたら責任取らなさそう問題」について考えてしまった。

でも、よく考えたら私は元国語教師である。文豪ジャパンもいい。ただ国語教師としては、もっと身近なメンバーでチームを組みたい。

そう、国語教材ジャパンである。

教科書で出会ったあの人たち。テスト前に無理やり暗記させられた詩人たち。

授業中に「つまり君はそんなやつなんだな」と言われてクラス全体が凍った、あのエーミール。彼らをピッチに立たせたい。

ということで発表します!

国語教材ジャパン、スターティングメンバー。
フォーメーションは4-2-3-1でいきましょう!


ゴールキーパー:ルロイ修道士(握手)

井上ひさし『握手』からの選出。

ゴールにルロイ修道士がいる安心感はすごい。派手な横っ飛びで見せるタイプではない。でも、ゴール前に静かに立っているだけで、チーム全体の心が整う。

失点しても選手を責めない。試合後は全員と握手をする。守護神というより精神的支柱である。


右サイドバック:エーミール(少年の日の思い出)

ヘルマン・ヘッセ『少年の日の思い出』からの選出。

エーミールは嫌なやつである。いや、正確には間違ったことは言っていない。言っていないのだが、言い方があまりにも刺さる。

「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな」

この一言で全国の中学生の心に何かしらの傷を残してきた少年だ。ただ、クジャクヤママユの収集は几帳面で観察眼は鋭そうなので守備は堅い。

問題は、味方にも厳しそうなところだ。


センターバック:李徴(山月記)

中島敦『山月記』からの選出。

虎である。
もはや人外。身体能力は申し分ない。

対人守備、空中戦、スプリント、全部強い。というか虎なのでパワー系。ただし、監督の指示を素直に聞くかは分からない。

「ラインを上げろ」と言われても、「なぜ私ほどの才能を持つ者が、ラインなどという凡庸な概念に従わねばならぬのか」とか思ってピッチから逃げてしまいそう。

ふざけんな。
監督の指示を聞け。


センターバック:ルントウ(故郷)

魯迅『故郷』からの選出。

派手な選手ではない。

でもこのチームには必要だ。子どもの頃のルントウには、チャー(イタチみたいな動物)を仕留めようとする、しなやかな身体性がある。

大人になったルントウには、生活の重みがある。相手の華やかなフェイントに浮かれない。世の中は簡単じゃない、と知っている人の守備をする。


左サイドバック:かぐや姫(竹取物語)

日本の代表古典SF『竹取物語』からの選出。

彼女は守備に向いている。なぜなら、相手を寄せつけないから。

突破したいなら、まず仏の御石の鉢を持ってきてください。次に蓬莱の玉の枝をお願いします。

相手フォワードはシュートを打つ前に心が折れる。ただし、試合終盤に月へ帰る可能性がある。せめて試合終了まで待ってほしい。

ダブルボランチ:松尾芭蕉(奥の細道)

奥の細道を歩いているのだから、普通に走れる。

持久力はある。しかも俳句の人なので、タッチ数が少ない。余計なことをしない。

五・七・五のリズムでボールをさばく。相手が激しくプレスをかけてきても、芭蕉だけは「しずけさや」とか言っている。並大抵の挑発には乗らない禅メンタル。


ダブルボランチ:清少納言(枕草子)

『枕草子』からの選出。

私は卒論で書くほど彼女がスキ。

知性、観察眼、言語センス、煽り性能、全部高い。男にも負けない。推しの定子様絶対主義なので、チームの美意識にも厳しいだろう。

「春はあけぼの」級の視野でピッチ全体を読む。ただし、見えたことを言う。

「そのパス、すさまじきもの」

やめて。
でも、ぬるい空気を切る人は必要だ。

トップ下:与謝野晶子(君死にたまふことなかれ)

ラブパワー半端ない攻撃の心臓である。

愛、怒り、祈り、情熱。反戦歌やエロい短歌を詠んで批判されても負けない。

全部をボールに乗せてくる。「君死にたまふことなかれ」の圧で、相手守備陣を揺さぶる。中盤の理性と前線の熱狂をつなぐのは彼女しかいない。

ただし愛の火力が強すぎるので、監督にはうまく制御してほしい。


右ウィング:那須与一(平家物語)

『平家物語』からの選出である。

扇の的を射抜く男だ。馬上で、波に揺れる船の上の扇を射る。そんな人間が右サイドにいたら、精密クロスもロングシュートもPKも任せられる。

大一番に強い。しかも多分、余計なことを言わない。黙って的を射る。え、一番カッコよくない??


左ウィング:孟浩然(春暁)

漢詩『春暁』からの選出である。

春眠暁を覚えず。つまり、春の朝の試合に弱い。致命的である。

キックオフが午前中なら、ベンチでまだ寝ている可能性がある。だが、目覚めた時の詩情はすごい。

ピッチに春が来る。鳥が鳴き、花が散り、相手ディフェンスが「なんかいい朝だな」と一瞬ゆるむ。その隙にクロスを上げる。

センターフォワード:メロス(走れメロス)

太宰治『走れメロス』からの選出。

説明不要。

走る。とにかく走る。戦術理解より先に、太陽の10倍の速さで走る。でも無駄走りも多い。(夫「現代のインテンシティの高いサッカーに一番合ってるかもしれない」私「日本語でしゃべって」)

試合終了間際、誰もが諦めた時間帯でも、メロスだけは走っている。ただし途中で寝る。よく冷えた清水を渡すと復活するので、用意しておくこと。


監督:孔子(論語)

『論語』からの選出である。

このチームをまとめられる人間が他にいるだろうか。

李徴は虎になる。
孟浩然はベンチで寝てる。
エーミールは味方のメンタルを折る。

ヨーロッパの監督なら速攻で辞任しそう(偏見すぎ)
でも、ここで孔子先生である。

「信なくば立たず」

この一言で、メロスが深く頷く。

「己の欲せざる所は人に施すことなかれ」

この一言で、エーミールがむっとして口を閉じる。一試合ごとに名言生まれそう。

戦術というより、徳でチームをまとめる。クセ強メンバーも孔子先生の手にかかればいけんじゃね!?


こうして組んでみると、国語教材ジャパンは普通に強そうである。
ただし、チームとしてまとまるかは別問題だ。

文学に出てくるキャラも、そもそも作家も、かなり面倒くさい。扱いやすい人間は教材になりにくいのかもしれない。

相手の本質を嫌な言葉で刺す人。
月に帰っちゃう人。
日本を徒歩でぐるっとしちゃう人。

でも、だからこそ覚えている。

国語教材とは、たぶん人間の面倒くささの見本市なのだ。

文学は「人間を見る目」を育ててくれる。
国語の教科書に載っていた人たちは、ただの暗記事項ではない。

弱さや強さ、ずるさや優しさ、こじらせや祈りを見せてくれる存在だった。

だから大人になっても、こうして遊べる。
国語教材ジャパン、面白すぎる。小学校国語教材縛りでもできそう。

なんのはなしですか。

でもやっぱり国語って楽しい。

個性的すぎる。アクしかない国語教材ジャパン。もう何が起きるか分からない。

でも少なくとも、退屈な試合にはならないと思う。


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