チャネリングで亡き祖父の言葉を聞いたら涙が抑えきれなかった
講座で偶然出会った人が、チャネラーだった。私はスピリチュアルが好きだけど、どっぷり活動する人を見ると警戒してしまう。
「この人は本物なのか?」と疑い出す。(ほんと失礼極まりないのだけど)
目の前にいる女性リノさんは、ふつうに可愛らしかった。
顔立ちは全然違うのに、なぜだか私と似ているような気がした。

名刺交換をしてお話しするうちに、共通の知り合いがいたり、共通の趣味があったり、果てにはご近所さんであることが分かり、自宅から徒歩10分の場所でイベントをすると言う。
なんじゃこの偶然。
お膳立てされている。
「元々はマッサージの仕事をしていて、数年前に能力が目覚めました」
「亡くなった方のお話を聞けます」
まだその時でさえ、半信半疑だった。でも嘘でもいいから、聞きたかった。20年前に亡くなった祖父の言葉が。

祖父は20年前、中学二年の頃に他界した。実業家で名を挙げ、今も続く会社を築き上げた。
平成期、じいさんなのにワープロを使いこなし、パイプで煙草を吸う。白髪頭を一つに結い、作務衣を着ていたので、親戚の子どもから「サムライ!」と呼ばれるほど癖のある人。
祖父の書斎にあるガラスケースの本棚には大学教授が読むような小難しい本がずらりと並んでいた。祖父は探究者で、書く人だった。
深い話ができる年齢になる前に、病気で他界。十四の私が初めて知る「死」だった。

当時の私はひどく俯瞰的でドライな部分があり、青白く横たわる祖父を見て「生の苦しみから解放されてよかった」と思った。寂しかったけれど泣きじゃくることもなく、淡々とその死を受け入れた。
けれど、大人になるにつれて、私のやりたいことが祖父のやりたかったこととそっくりなのだと気づく。
人に教えること。
文章を書くこと。
祖父は教師や作家に憧れていたが、叶わなかった。代わりに社長、父、祖父として家族や部下を教え導き、大量の手記を残した。

雪の降る土曜日、イベント会場に向かうとリノさんが待っていた。
「お話を聞きたい方のお名前を教えてください」
「どんなことを聞きたいですか?」
まだ出会って二日目のリノさんに、私は気付けば身のうちを話していた。
これまで意図せず祖父の思いを辿るように生きてきたこと。
起業してからは更に祖父を感じるようになったこと。
母にも誰にも話さなかった、ずっと心の中に秘めていた思い。
リノさんは目を閉じて、遠くの声に耳を澄ませるようだった。
「ずっと近くで見ていた」
「これまで大変だったね。でも乗り越えられると分かっていた」
「もっと頼っていいんだよ。呼びかけてくれればいい」
リノさんを通じて伝えられる言葉が真実なのか、確かめるすべはない。
それらしいことを言っているのだと言えばそうかもしれない。けれど私は祖父の思いに触れた気がした。
生前、からかうような言葉ばかりで、真剣に対話した思い出はない。社長としての側面を垣間見たこともなく、私の前ではただの意地悪で優しい爺さんだった。
昔は妻に手を挙げ、母を厳しい躾で縛っていたという。
過去を知ったとき、祖父は幼少期に傷付いた経験があったのではないかと私はずっと思っていた。
「母(祖父にとっては娘)に今日の話を伝えるつもりはないけれど、私から母にしてほしいことはありますか?」と聞いた時、
「苦労かけてすまんなぁ!」
一番感情の表れた、困ったような声で謝られた。
子育てを反省する親の姿だった。
ああ、祖父なのかもしれない。
その時に強く思った。
生前は頑固で絶対こんな発言は口にしなかっただろう。でもこれが本音なのかもしれない。厳しく躾けられた母は愛情深いけれど、私に厳しかった。子育てスタイルは遺伝するのだ。
「お前が好きに生きればいい。そうすれば母も好きにできる」
愛するがゆえに厳しく縛りつけた子育てを、祖父なりに反省してるのだろう。どれも憶測だけど、私にはそう思えた。
ご所望といえば
・墓参りの回数を増やすこと
・ご先祖にもっと頼ること
・自信を持つこと
最近ずっと「自信を持つこと」は課題だった。自分を信じきれず、誰かに褒めてもらうことを願っていた。祖父に関してもそうだ。
これまでずっと、祖父の残したものを大切にしてきたのは私だった。
祖父が母に買った振袖を、成人式と前撮りで着た。
祖父が買った七段飾りの豪奢な雛人形を20年ぶりに開封した。
フロッピーディスクに残した祖父の手記をわざわざ接続機器を取り寄せて開き、兄弟に共有した。
こんなにこんなに追いかけて、辿ってきたことを、褒めてほしかった。けれど、多くの言葉は並ばなかった。
「思い出してくれてありがとう」
シンプルな言葉に集約され、我が一族の不器用さを思い知る。
もっともっと褒めてよ。
親の賞賛をねだる子どものように、褒めそやしてほしかった。
でも本質はシンプルだ。
「ありがとう」の五文字に全てが込められてしまう。
そう思えば諦めざるを得ない。
自分で自分を評価する。
自信を持つ。
誇りに思う。
これまでの行いを、自分が一番認めてやればいい。
だって孫なのだ。
血を、絆を、縁を強く受け継ぐ存在なのだから。
強く誇っていればいい。
胸を張って生きればいい。
「誰の孫なのか?」
鏡に映るのは「私」であり、私は「私を形作るすべての人」で形成される。
他者からの賞賛は、きっと私が私を誇れたときに届けられるのかもしれない。
朝が来れば新しい一日が始まる。
どう生きようか?
書いていけ。
書いていこう。
この命が終わるときまで。
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文筆屋ことロップ代表
茨木彩菜〈ペンネームはアヤコ〉
幼少期から日記、エッセイ、小説を執筆する。中学校国語教員を8年間務め、出産をきっかけにwebライターに。多世代共生社会実現のため、介護職に従事。現在は文章コンサルタントとして、「自信を持って書ける人」を増やす活動に専念する。
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