「インドで食べた韓国料理」

インド、グルガオンの韓国料理店
故郷の味は、人について、旅をする
引き戸を、あける。
え、ここ。
さっきまで、インドだったのに。
瓦屋根。
真鍮の、器。
床に、座る、座敷。
ドアの、むこうは
まるごと、韓国だった。
🏯 ここ、インドだよね
天井から、瓦。
壁には、ハングルの書。
丸い棚に、白い食器が、ずらり。
奥には、ちいさな枯山水。
サボテンと、岩と、水の音。
インドの、まんなかで
韓国の宮殿に、迷いこんだ、みたい。


🍶 つぎつぎ、運ばれてくる
席に、つくと
たのまなくても、小鉢が、ならぶ。
白菜キムチ。
きゅうり。
味玉に、青唐辛子。
マカロニサラダ、まである。
これ、ぜんぶ
おかわり、ただ。

韓国らしい、前菜が並びます

中身がすこし違う
そこから、もう
怒涛だった。
キンパが、来る。
海苔巻きだ。
でも、すこし、太い。

豆腐キムチが、来る。
白い豆腐が、お花みたいに
ぐるりと、ならんでる。
まんなかに、炒めたキムチと、豚。

豆腐の花が、きれい
海鮮チヂミが、来る。
鉄板で、じゅう、と。
こんがり、まるく。

ふちが、かりっと焦げてる

これははずせないね
そして、マッコリ。
白く、にごった、お酒。
グラスに、料理が、うつる。

🔥 肉も、麺も、止まらない
ラムのグリルが、来る。
骨つきの肉に
にんにくが、ざくざく。
レモンを、ぎゅっ。

にんにくと、レモンと。
ビールが、ほしくなる
チャプチェが、来る。
春雨と、彩り野菜。
牛肉と、ごま油の、いい匂い。

つやつやの春雨。
これ、好き!
肉が入ってればなんでも好き!

豚カルビの、甘辛炒め。
唐辛子の粉を、つけて
はふはふ、いう。

ごはんが、すすむやつ
テーブルは、もう
ぎゅうぎゅう。
真鍮の、やかん。
みんなの、手。
だれかの、笑い声。

大人数で食べる食事は楽しい
🧊 この冷麺は、旅をしてきた
しめに、冷麺。
氷の、うかんだ、スープ。
ゆで卵に、薄切りの肉。
つるっと、さっぱり。
あつい体に、しみる。

氷で、きんきん。
あとで、知った。
この冷麺、もともとは
韓国の、北のほうの
冬の、食べものだった、らしい。
寒い、オンドル部屋で
あつあつの部屋で、つめたい麺を、すする。
それが、戦争のとき
北から、南へ、逃れた人たちと、いっしょに
南へ、ひろがった。
故郷の味は
人に、ついて
旅を、するんだ。
そして、いまは
インドの、グルガオンにも
ちゃんと、ある。
北から、南へ。
韓国から、インドへ。
味は、どこまでも
ついていく。
🍚 ごはんだけが、インドだった
最後に、プルコギ。
牛肉と、卵と、野菜の、炒めもの。
甘くて、やさしい。
その、となりに
白い、ごはんが、ちょこんと。
ひとくち、食べて——
あれ。
このごはん、ながい。
ぱらっと、して
細くて、かるい。
バスマティ、だ。
インドの、お米。

よく見ると、このお米、ながい。
インド米だった
料理は、ぜんぶ、韓国。
お皿も、器も、韓国。
なのに。
ごはんだけが
こっそり、インドだった。
故郷の味は
どんなに、がんばっても
その土地の、匂いを
すこしだけ、まぜてくる。
店の、ランチョンマットに
韓国語の、詩が、書いてあった。
ざっくり、訳すと、こう。
「陽だまり ひとつかみ、
音楽 ひとくさり。
故郷の、なつかしい食べもの。
息をする、すべての瞬間が、しあわせ」

🎬 故郷は、味の形をして
インドで。
日本人が。
韓国の、故郷の味を、食べた。
しかも、ごはんは
インドの、お米で。
ぜんぶ、まざってる。
でも。
まざってても
おいしいものは、おいしいし
なつかしいものは
ちゃんと、なつかしい。
ごはんだけが、インドだった。
それも、ふしぎと
わるく、なかった。
故郷は
味の形をして
どこへでも
ついて、いく。
あなたにも
遠い町で、ふいに出会って
ほっとした味、ありますか。
📍 ご案内 ― 行ってみたい人へ
・店:Gung The Palace(グン・ザ・パレス)。韓国料理
・場所:グルガオン、セクター29(クラウンプラザの裏)。
デリー・ノイダにも店あり
・席:床に座る、座敷スタイル。引き戸の個室もある
・名物:バンチャン(前菜・おかわり自由)
チヂミ/チャプチェ/冷麺/プルコギ
・ひとこと:日本人の口にも、するっと合う。
出張で、すこし疲れた夜に

📎 Gung The Palace 公式サイト
📎 冷麺はもともと朝鮮半島・北部(平壌/咸興)の冬の料理で、朝鮮戦争で南へ逃れた人々が韓国に広めた(冷麺・Wikipedia)
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