#113 デジタル難民 母校に卒業証明書を取りに行く
大学の卒業証明書が必要になった。
講師になるにあたっての、ささやかな関門である。
初めは、ウェブで取り寄せることにした。
今どきは全部オンラインだ。便利なはずだった。
ところが、届いたのは
外務省提出用の成績証明書だった。
申し込み完了メールを見て、嫌な予感がした。
「あれ?」
すぐ大学に連絡したが、時すでに遅し。
「もう手続きが始まっておりますので、キャンセルはできません」
静かに宣告された。
dポイントで支払った約1000ポイントは、
静かに、しかし確実に、消えた。
2度目の挑戦を考えた。
だが、問題はそこではない。
なぜ間違えたのかが、自分で分からない。
つまり、
次も同じ間違いをする可能性がある。
これはもう、技術の問題ではない。
人間の仕様の問題だ。
私は決めた。
4月から時間もある。
だったらもう、直接行こう。
30年ぶりに、母校を訪れることにした。
電車に乗って、
歩いて、
窓口に並んで、
紙を出して、
名前を書いて、
お金を払う。
たぶん、20分で終わった。
私はその20分のために、
往復2時間かける。
そして思う。
便利とは、何だろう。
デジタルとは、誰のためのものだったのだろう。
いや、もういい。
私はただ、
確実に卒業した人間として扱われたいだけだ。
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