見出し画像

あるレジ打ち女性の話


№689 今回紹介するお話

ここではネット上やnewsなどで話題になった涙話をYouTubeなどでアップされている動画と共に「涙が出るほどいい話」として記事にしています。

今回紹介するのは、2008/9/4に出版された木下 晴弘氏著書の「涙の数だけ大きくなれる!」(フォレスト出版)より抜粋したものになります。

このお話を元にしたYouTube動画がありましたので、併せて紹介していきます。


投稿内容

その女性は、何をしても続かない子でした。  

田舎から東京の大学に来て、部活やサークルに入ったのは良いのですが、すぐにイヤになって次々と所属を変えていくような子だったのです。

そんな彼女にも、やがて就職の時期がきました。  

最初、彼女はメーカー系の企業に就職します。

ところが仕事が続きません。

勤め始めて3ヵ月もしないう ちに上司と衝突し、あっという間にやめてしまいまし た。  

次に選んだ就職先は、物流の会社です。  

しかし入ってみて、自分が予想していた仕事とは違うという理由で、やはり半年ほどでやめてしまいまし た。  

その次に入った会社は、医療事務の仕事でした。  

しかしそれも「やはりこの仕事じゃない」と言ってやめてしまいました。 

そうしたことをくり返しているうち、いつしか彼女の履歴書には、入社と退社の経歴がズラッと並ぶようになっていました。  

すると、そういう内容の履歴書では、正社員に雇ってくれる会社がなくなってきます。  

ついに、彼女はどこへ行っても正社員として採用してもらえなくなりました。  

だからといって生活のためには働かないわけにいき ません。

田舎の両親は早く帰って来いと言ってくれます。

し かし、負け犬のようで帰りたくはありません。  

結局、彼女は派遣社員に登録しました。  

ところが、その派遣も勤まりません。

すぐに派遣先の社員とトラブルを起こし、イヤなことがあればその仕事をやめてしまうのです。  

彼女の履歴書には、やめた派遣先のリストが長々と 追加されていきました。  
ある日のことです。  

例によって「自分には合わない」などと言って派遣先をやめてしまった彼女に、新しい仕事先の紹介が届 きました。  

それは、スーパーでレジを打つ仕事でした。  

当時は、読み取りセンサーに商品をかざせば値段が入力できる、今のようなレジスターではありません。

値段をいちいちキーボードで打ち込まなくてはならず、多少はタイピングの訓練を必要とする仕事でした。  

ところが勤めて1週間もするうち、彼女はレジ打ちにあきてきました。

ある程度仕事に慣れてきて、「私はこんな簡単な作 業のためにいるのではない」と考え出したのです。  

その時、今までさんざん転々としてきながらそれでも我慢の続かない自分が、彼女自身も嫌いになってい ました。  

もっとがんばらなければ、もっと耐えなければダメということは本人にもわかっていたのです。  

しかし、どうがんばっても、なぜか続かないのです。  

もっとがんばるか、それとも田舎に帰ろうか。

とりあえず辞表だけ作って、決心をつけかねていました。  

するとそこへ、お母さんから電話がかかってきました。

また田舎に帰ってくるよううながされ、これで迷いが吹っ切れました。  

彼女はアパートを引き払ったらその足で辞表を出し、田舎に戻るつもりで部屋を片づけ始めました。  

長い東京生活で、荷物の量はかなりなものです。

あ れこれダンボールに詰めていると、机の引き出しの奥から手帳が出てきました。  

小さい頃に書きつづった自分の大切な日記でした。

なくなって探していたものでした。

そして日記をパラパラとめくっているうち、彼女は 「私はピアニストになりたい」と書かれているページ を発見しました。  

そう、彼女の小学校時代の夢です。  

「そうだ。あの頃私は、ピアニストになりたくて練習をがんばっていたっけ」

と、彼女はあの時を思い出しました。  

しかも、ピアノの稽古だけは長く続いていたのです。

けれども、いつの間にかピアニストの夢はあきら めていました。  

彼女は心から夢を追いかけていた自分を思い出し、 日記を見つめたまま、本当に情けなくなりました。  

「あんなに希望に燃えていた自分が今はどうだろう か。履歴書にはやめてきた会社がいくつも並ぶだけ。 自分が悪いのはわかっているけど、なんて情けないんだろう。そして私は、また今の仕事から逃げようとし ている……」  
彼女は静かに日記を閉じ、泣きながらお母さんに電話したのです。  

「お母さん、私、もう少しここでがんばる」  

彼女は用意していた辞表を破り、翌日もあの単調なレジ打ちの仕事をするために、スーパーへ出勤してい きました。  

ところが「2、3日でもいいから」とがんばっていた彼女に、ふとある考えが浮かびます。  

「私は昔、ピアノの練習中に何度も何度も弾き間違えたけど、くり返し弾いているうちに、どのキーがどこにあるかを指が覚えていた。

そうなったら鍵盤を見ずに、楽譜を見るだけで弾けるようになった」  

彼女は昔を思い出し、心に決めたのです。  

「そうだ、私は私流にレジ打ちを極めてみよう」と。  

レジは商品ごとに打つボタンがたくさんあります。

彼女はまずそれらの配置をすべて頭に叩き込むことに しました。  

覚え込んだら、あとは打つ練習です。

ピアノを弾くような気持ちでレジを打ち始めました。

そして数日のうちに、ものすごいスピードでレジが 打てるようになったのです。  

すると不思議なことに、それまでレジのボタンだけ見ていた彼女が、今まで見もしなかったところへ目がいくようになったのです。  

最初に目に映ったのはお客さんの様子でした。  

「ああ、あのお客さん、昨日も来ていたな」

「ちょう どこの時間になったら子ども連れで来るんだ」

とか、 いろいろなことが見えるようになったのです。  

それは彼女のひそかな楽しみにもなりました。  

相変わらず指はピアニストのように、ボタンの上を 飛び交います。

そうしていろいろなお客さんを見てい るうちに、今度はお客さんの行動パターンやクセに気 づいてくるのです。  

「この人は安売りのものばっかり買う」とか、「この 人はいつも店を閉める間際に来る」とか、「この人は高いものしか買わない」とかがわかるのです。  

そんなある日、いつも期限切れ間近の安い物ばかり買うおばあちゃんが、5000 円もする尾頭付きの立派鯛をカゴに入れてレジへ持ってきたのです。  

彼女はビックリして、思わずおばあちゃんに話しか けました。  

「今日は何かいいことがあったんですか?」  

おばあちゃんは彼女ににっこりと顔を向けて言いま した。  

「孫がね、水泳の賞を取ったんだよ。今日はそのお祝 いなんだよ。いいだろう、この鯛」  

「いいですね。おめでとうございます」  

うれしくなった彼女の口から、自然な言葉が飛び出しました。  

お客さんとコミュニケーションをとることが楽しくなったのは、これがきっかけでした。  

いつしか彼女は、レジに来るお客さんの顔をすっかり覚えてしまい、名前まで一致するようになりました。  

「○○さん、今日はこのチョコレートですか。でも今日はあちらにもっと安いチョコレートが出てますよ」  

「今日はマグロよりカツオのほうがいいわよ」

などと言ってあげるようになりました。  

レジに並んでいたお客さんも応えます。  

「いいこと言ってくれたわ。今から替えてくるわ」

そう言ってコミュニケーションをとり始めたのです。  

彼女はだんだんその仕事が楽しくなってきました。  

そんなある日のことです。  

「今日はすごく忙しい」と思いながら、彼女はいつものようにお客さんとの会話を楽しみつつレジを打って いました。

すると店内放送が響きました。  

「本日は大変に混みあいまして申し訳ございません。 どうぞ空いているレジにお回りください」  

ところがわずかな間をおいて、また放送が入ります。  

「本日は混み合いまして大変申し訳ありません。重ねて申し上げておりますが、どうぞ空いているレジのほ うへお回りください」  

そして3回目、同じ放送が聞こえてきた時に、はじめて彼女はおかしいと気づきました。  

そして、ふと周りを見渡して驚きました。  

どうしたことか5つのレジが全部空いているのに、 お客さんは自分のレジにしか並んでいなかったのです。

店長があわてて駆け寄ってきます。  

そしてお客さんに

「どうぞ空いているあちらのレジ へお回りください」

と言ったその時です。  

お客さんは店長の手を振りほどいてこう言いまし た。  

「放っといてちょうだい。私はここへ買い物に来てるんじゃない。あの人としゃべりに来てるんだ。だから このレジじゃないとイヤなんだ」  

その瞬間、彼女はワッと泣き崩れました。  

その姿を見て、別のお客さんが店長に言いました。  

「そうそう。私たちはこの人と話をするのが楽しみで来てるんだよ。今日の特売はほかのスーパーでもやってるよ。だけど私はこのおねえさんと話をするために ここへ来ているんだ。だからこのレジに並ばせておくれよ」  

彼女はポロポロと泣き崩れたままレジを打つことが できませんでした。

はじめて、仕事というのはこれほど素晴らしいものなのだと気づいたのです。

そうです。

すでに彼女は、昔の自分ではなくなっていたのです。

****************************************************************************
それから、彼女はレジの主任になって、新人教育に 携わったそうです。  

彼女から教えられたスタッフは、仕事の素晴らしさを感じながら、今日もお客さんと会話していることで しょう。  

その後、彼女の履歴書がどうなったかは、誰も知り ません。

追記

著者である木下 晴弘氏が代表を務めている株式会社アビリティトレーニングのサイトにこのお話を含めた本が掲載されておりました。

https://www.abtr.co.jp/namida.pdf


動画

このお話を元に作られた動画がありましたので紹介します。

感動する話

フォレスト出版

こちらはこの話の出版社であるフォレスト出版様がアップした動画になります。

思い出のゆっくり2ch

改編された内容になっています。


さいごに

私のnote記事は営利を目的とはしておりません。
単純に涙した話を皆さんと一緒に共有したいと思い記事にしています。

しかしながら「著作権」などの問題がある場合は削除致しますのでお知らせください。

また、リンクしている転載元やまとめサイト、過去ログ、動画などはサイト運営者や動画クリエイター等の方々の諸事情などによりリンクが切れている場合がありますので、その際はご容赦下さい。

なお、掲載している画像は いらすとや 様、みんちりえ様、イラストAC様から頂いています。

最後までゆっくりお付き合いいただきありがとうございます。


いいなと思ったら応援しよう!

イッチ(涙が出るほどいい話) noteは営利目的でやっているわけではないのでチップはいりません。 そのお金はご自身やご家族のために、もしくは募金で使って下さい。 代わりに「フォロー」や「いいね」をして頂けると嬉しいです。