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氷河期世代AD、テレビの片隅で。#30余談「6kgの焼き鳥!一人で全部食えよ!!」

今でもテレビでは大食い企画が放送されているし、
YouTubeを開けば、とんでもない量の料理を平らげる
大食いYouTuberが人気だ。

彼らは、人を楽しませるために挑戦し、
その姿に驚いたり応援したりする。

でも、僕にも「大食い」をした思い出がある。

もちろん、企画ではない。

テレビ番組のロケが終わったあと、
ディレクターのたった一言から始まった、
誰も得をしない大食いだった。

当時、珍しい料理を紹介するコーナーで、
巨大な焼き鳥を取材したことがある。

普通の焼き鳥ではない。

つくねが3kg。

鶏ももも3kg。

「これ、本当に焼き鳥って呼んでいいの?」と思うような、
とにかく規格外の焼き鳥だった。

撮影は無事に終わり、スタッフみんなが一息ついていた時、

「さあ、撤収しよう」

そう思った瞬間だった。

ディレクターが僕を見て言った。

「お前、それ全部食べろ。」

一瞬、冗談かと思った。

でも、その人は真顔だった。

合計6kg。

当時の僕は小柄でガリガリ。

食生活もかなり貧しかった。

編集やロケで余った弁当を冷凍し、
何日かに分けて食べたり、
安いカップ麺で空腹をごまかしたり。

そんな人間が、いきなり6kgの焼き鳥を
一人で食べられるわけがない。

でも、ADに「無理です」という選択肢はなかった。

恐る恐る食べ始める。

味はもちろんおいしい。

店主さんが丁寧に焼いてくれた自慢の焼き鳥だ。

でも、おいしいことと、
食べ続けられることは別の話だった。

つくねを4分の1ほど食べたところで、完全に限界がきた。

箸が止まる。

胃が「もう勘弁してください」と悲鳴を上げていた。

するとディレクターが一言。

「トイレで吐けば、まだ食べられるだろ。」

今なら完全にアウトな発言だ。

当時でも十分アウトだったと思う。

どうしよう。

本気で困っていると、
その様子を見ていた店主さんが声をかけてくれた。

「もう無理しなくていいよ。」

「料理は、おいしく食べてもらうのが一番だから。」

そう言うと、慣れた手つきで
焼き鳥を持ち帰り用に包み始めてくれた。

そして最後に、僕に向かって笑いながら言った。

「お兄ちゃん、大変だろうけど、頑張れよ。」

その一言が、妙にうれしかった。

テレビの仕事をしていると、
怖い人や理不尽な人にもたくさん出会った。

でも、それと同じくらい、
こうして何気なく手を差し伸べてくれる優しい人にも出会えた。

あの日持ち帰った巨大焼き鳥は、
家の冷凍庫にきれいに収まった。

そして、数日……いや、
一週間くらいかけて少しずつ食べた気がする。

正直、お金がなかった僕には、かなり助かった。

あのディレクターは僕に6kgの焼き鳥を食べさせようとした。

でも結果的に、僕は一週間分くらいのおかずを手に入れた。

人生、何が幸いするかわからない。

それでも、もし今あの店主さんに会えるなら、
一番伝えたい言葉はこれだ。

「あの時の焼き鳥はスタッフが(僕)が本当に
 最後までおいしくいただきました。」


#テレビ業界  #氷河期世代 #実話 #大食い


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