上大岡駅、にぎやかさの底でコーヒーを冷ます
上大岡駅は、にぎやかな駅だ。
京急の特急が停まり、横浜市営地下鉄も交わる。大きなバスターミナルがあり、朝から晩まで人の流れが途切れない。
横浜市南部エリアの中心地。
そう言われると、少し大げさにも聞こえるが、実際に歩いてみると納得する。ここには、生活に必要なものが一通り揃っている。
京急百貨店。
大きな家電量販店。
服も、食料品も、贈答品も、だいたいここで済む。
駅前の交差点には松屋があり、横浜らしく家系ラーメンの店が何軒も並んでいる。
濃いスープの匂いが、時間帯によって街に漂う。昼でも夜でも、腹を空かせた人を逃がさない匂いだ。
少し目立つ場所には、居酒屋チェーンの三代目鳥メロがある。
個人の感覚だけれど、この店が出店している街は、だいたい「人の回転がいい」。学生も、会社員も、地元の人も、ほどよく混ざっている街。
自分の中では、街の賑わいを測る一つのバロメータになっている。
改札を出ると、人の層がはっきりと見える。
学生、会社員、主婦、年配の人。
若者だけでもなく、高齢者だけでもない。
上大岡は、世代が自然に混ざる街だ。
誰かが主役になりすぎることがない。
コーヒーを飲むために、スターバックスに入る。
この街には、個人店の渋い喫茶店よりも、スターバックスの方がよく似合う。
上大岡の賑やかさと、均質な安心感。ちょうど噛み合っている。
注文は、ドリップコーヒー。
席に座り、カップを両手で包む。
窓の外では、バスが次々と発着している。
港南台、磯子、洋光台、上永谷。
どれも、観光とは無縁の、生活の行き先だ。
歩いている人たちも、目的がはっきりしているように見える。
買い物。
通勤。
通学。
それぞれの人生が、同時に進行している。
上大岡は、通過点であり、定着点でもある。
横浜へ向かう途中の人もいれば、ここで一日を完結させる人もいる。
そして、この先には横須賀がある。
京急に乗れば、少しずつ街の空気が変わっていく。
上大岡は、横須賀への玄関口でもあるのだ。
都会と、少し荒っぽい港町の、その境目。
コーヒーを一口飲む。
苦味はあるが、嫌ではない。
若い頃は、もっと刺激が欲しかった。
もっと派手で、もっと速い街に憧れていた。
でも今は、
上大岡くらいの密度が、ちょうどいい。
すべてが揃っているわけではない。
けれど、足りなくて困るほどでもない。
人生も、きっと似たようなものだ。
何かを大きく成し遂げたわけではなく、
何かに決定的につまずいたわけでもない。
ただ、時間が積み重なってきただけ。
カップの中のコーヒーは、少しずつ冷めていく。
それを、悪いことだとは思わない。
熱々のままでは、味はわからない。
少し冷めて、ようやく輪郭が見えてくる。
外では、またバスが出ていく。
誰かが乗り、誰かが降りる。
上大岡駅は、今日もにぎやかだ。
そして、そのにぎやかさの底には、生活がある。
この街は、
人生の途中に、ちょうどいい。
