【ちび創作大賞】天野雫さんのテーマ「風」 天使と呼ばれた女は、風になりたかった。私なりの仕事の流儀。
私は、以前働いていた職場で、
「天使ちゃん👼」
と呼ばれていた。
……いじられてるよね?
と思ったあなた。
正解です🤣
完全にいじられてました。
でも、それでよかったのです。
そういう立ち位置を、自分で選んでいたから。
その職場は女性が多く、見事なくらいの派閥ができていた。
社員A派閥。
社員B派閥。
そして、パートのお姉様C派閥。
Aと話せばBの悪口、
Bと話せばAの悪口、
Cは今日も元気に、「どっちも気に入らん!」
……正直。
めんどくさい🤣
だから私は、どこの派閥にも属さなかった。
でも、ただ距離を置いていたわけではない。
Aともランチ。
Bとも飲み会。
Cの忘年会にも参加。
誰とでも普通に話した。
新人教育も任されていたから、新人さんを怖がらせるわけにはいかないし、
誰かを贔屓したり貶めたりするのもしたくないし、何より、そんな空気の中で仕事をするのが嫌だった。
そんな私が、働く上で、絶対に守っていたことがある。
それは、誰に対しても「天使の着ぐるみ」を着て接すること。
どんなに嫌なことがあっても、職場の人の悪口は職場の人もしくは半径100キロ以内では絶対に言わない。
誰かが悪口を言ってるときは、
この顔(´・ω・`)で聞く。
同調も否定もしない。
全員を好きになる必要はない。
でも、嫌いにもならない。
その人なりの事情があると思うようにする。
別に誰かの味方になりたかったわけじゃない。
本当に、みんなそれぞれいいところがあると思っていた。
それに、職場の人間関係としてだけでなく、ちゃんと心から友達だと思える人たちにも出会えていた。
上っ面だけの付き合いじゃなく、ちゃんと心からの信頼関係も築けていたと思う。
そういう人とは今でも連絡を取り合っている。
普段の私は、コミュ障で、人見知り。
コンビニで対人レジ行くのも緊張するくらい、
初対面なんて大の苦手。
でも仕事になると、不思議とスイッチが入る。
お給料をいただいている以上、人間関係も仕事の一部。
そんなふうに思っていた。
もちろん、
「八方美人。」
「いい子ちゃんぶりっ子。」
「本音が見えない。」
そんな陰口を言われることもあった。
……まぁ、そう見えるなら仕方ない。
そう思うのも鼻に付くのも自然だと思う。
陰で言ってくれてるなら全然オッケー。
直接言われたら、めっちゃ目泳ぐし、トイレで泣くと思うので🤣
私は想像以上に打たれ弱い。
そんな私が毎年もらっていた賞がある。
その名も、
エンジェル賞。
「その場にいるだけで周りを和ませる人」に贈られる賞らしい。
……正直、どうかと思う、その賞。
でも賞金付きだった。
営業スマイルで受け取った。
現金は、すり減った心の特効薬である。
ある日。
A・B・Cが全面戦争。
社内の空気は最悪。
仕事がはかどらない。
上司の目は泳いでいる。
若い子は怯えてる。
社長は何故か隅で震えてる。
そこで、中間管理職の私の出番だった。
そして同時になぜか全派閥が私を勧誘し始めた。
「いちごもんさんはA!」
「いやB!」
「うちだから!」
……え?
ドラフト会議ですか?
AとBとC。
個人同士の仲が悪いのは分かる。
苦手な人くらいいる。
人間だもの。
それは仕方ない。
でも、私が気になったのは、そこじゃなかった。
「私はA派閥だからBもCも嫌い。」
「私はB派閥だから、AもCも受け入れない。」
など誰かの意見を借りて、相手を見るようになること。
自分で考えることまで、誰かに預けてしまうこと。
そして、周りにも同じ色に染まるよう求めてしまうこと。
それは少し違う気がした。
仕事なんだよ?
お給料をもらって働いてるんだよ?
同じ場所で、同じ目的に向かっているはずなのに。
なぜ個人の感情や派閥が優先されるのか。
単純に、みんなで仲良くやったほうが仕事もはかどるし、お互い楽じゃない?
私の頭の中で、ぐるぐるが始まる。
いやでも、待てよ。
そうやって人は集まり、仲間を作り、やがて大きな集団になっていくのかもしれない。
これも、人間の歴史なのかも……。
……いやいや。
ここは職場だ。
歴史を繰り返してる場合じゃない。
台風みたいに、いろんな思いが渦を巻いて、もう何が正解か分からない。
気づいたら私は、今までかぶってきた天使の着ぐるみを脱いでいた。
そして、ぽつりと一言。
「もうやめません?
いい大人が派閥とか……
ダセェですよ。」
一瞬、社内の空気が止まった。
(やってしまったかも……)
心臓はバクバクだった。
慌てて天使の着ぐるみを着るが、口から出た言葉はもう戻せない。
その前に空気を読めよ。
一瞬セルフツッコミを入れてみるが、
空気を読むって、派閥に入ること?
私情で仕事を滞らせること?
なら私は読まないでいい。
なんて、頭の中で無理やり自己肯定をしていると、
普段から天使のふりをしてきただけあって、意外や意外、すんなりと好意的に受け取ってもらえた。
「……ま。そうだよね」
「バカバカしいよね……」
みたいに口々に言い始めた。
あとで、めちゃくちゃ褒めてくれる人もいれば、
「よく言ったねー」
なんて爆笑しながら労ってくれる人もいた。
社長は半分涙目で私を拝んでいた。
そして数日後。
止まっていた空気は、少しずつ動き始めた。
いつの間にか、AもBもCも普通に話していた。
職場にはまた笑い声が戻っていた。
もしかしたら、みんな本当はきっかけを探していただけなのかもしれない。
それ以来、
「天使ちゃーん🍀」
🍓「はーい😆💕」
「天使ちゃん、ここさぁ……」
🍓「はいはい、どこですか?」
完全に天使いじりです。
最初は「天使じゃないですよー😂」と、否定していたけど、
途中から面倒になって元気よく返事をするようになった🤣
翌年も、満場一致でエンジェル賞。
金一封には、社長のポケットマネーが少しだけ増えていた。
ちなみに、ただの空気要員だと思われたくなくて、仕事も必死だった。
ベスト〇〇賞やMVP賞をもらっていたのも、実は自分の居場所を守るための、小さな武器だった。
自分が仕事をしやすい環境を整える。
そういうところは、かなりの効率厨である。
感情のぶつかり合いに時間を溶かすより、
天使の仮面を被ってでも最短ルートで成果を出したい。
それが、私なりの仕事の流儀であり、一番効率のいい「戦い方」だったのかもしれない。
余計なことに気を取られず、目の前の仕事に集中できる。
楽しければ、それが仕事へのモチベーションになる。
その環境を自分で作るのが、私にとっての「正解」だった。
振り返ると、 誰かを変えたかったわけでも、論破したかったわけでもない。
大旋風で目立ちたいわけでもない。
台風で困らせたいわけじゃない。
ただ、空気が淀めば、風を起こしたくなる。
淀んだ空気を動かして、誰かが笑える場所を作る。
私がなりたかったのは「天使」ではなく、
そんな景色を作るための「風」になりたかったのだと思う。
そんな働き方は、
少し犠牲じみているのかもしれない。
仕事を辞める頃にはエネルギーを使い切っていたこともあった。
正直、他人にはあんまりお勧めしない。
私みたいな、ちょっと特殊な変態がやればいいと思っている。
私は単純に、周りの皆が楽しそうに笑っているのが好きだから。
今日も、誰かが呼吸しやすい場所を作るために。
私は私なりのやり方で、小さな風を起こしにいく。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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7/20までー(。•̀ᴗ-)✧
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