【エッセイ】迷子になるのもまた一興。

夕焼けは静かに空へ帰り、
蝶は風の気分に従う。
月は何も説明せず、
ただ淡く夜を泳いでいた。
雲はゆっくりほどけ、
空気は季節の輪郭を撫ていく。
古い観覧車は、
今日を急かすこともなく
静かに回り続けていた。
遠くで犬が鳴く。
海はたぶん、それを聞いている。
誰かの靴跡が
春の入口を見つけていた。
透明なバス停。
砂糖みたいに淡い雨。
カーテンの裏では、
古い星座が小さく瞬いている。
迷子になるのも一興。
世界はきっと、
まっすぐ歩くためだけには
出来ていない。
だから、
少しくらい遠回りでもいい。
名前のつかない夜も、
意味のない沈黙も、
誰にも見せない感情も、
全部そのまま、
静かに持っていればいい。
こぼした吐息が、 いつか誰かの呼吸になる。
月は今日も泳ぎ、
蝶は好きな場所へ向かい、
観覧車はゆっくり回り続ける。
それだけで、 たぶん十分に美しい。
あとがき
情報が溢れ、
慌ただしく過ぎる毎日に疲れてしまったり、
どうしても自分に自信が持てなくなったり。
そんな夜にこの言葉を置きました。
「ちゃんとしなきゃ」と頑張るあなたに、せめてこの場所だけは、何もしなくていい場所であってほしい。
泣いてもいいし、立ち止まってもいい。
あなたの抱えるモヤモヤも、行き場のない悲しみも、無理に消さなくて大丈夫です。
それらすべてを含めて、あなたはあなたのままで、もう十分に尊いのだから。
あなたの言葉が、いつか誰かの力になる。
この詩が、あなたの心の痛みにそっと手を添えるような、温かな灯りになりますように。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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