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【18・終】かぐや姫の憂うつ (短編小説)

18:ヨウへの手紙

数日後、かぐやは月へ帰還した。

彼女がどうやってゴテンを抜け出し、月へ帰ったのか知る人は誰もいない。

側仕えだったヨウも、かぐやがいなくなると同時に姿を消した。

彼の居場所を知る人もまた、いない。

かぐやを育てたロウフウフは、彼女からの手紙を抱きしめて泣き暮らしていると言う。

庭に面した広い部屋で一人外を眺めていたミカドに、花愛君は歩み寄った。

「陛下。どうなされたのですか」

ミカドは物思いに沈んだ表情のまま、花愛君に向き直った。

「いや。ただ、思い出していただけだ」

花愛君は困惑した。

自分が眠り続けていた間に、何かあったのだろうか。

「美しい女と、香りのしないお前を」

「…」

花愛君が眠り続けていたあいだ、彼にそっくりの者がミカドの傍で働いていていたというのは、一部の者しか知らない極秘事項になっている。

「責務を全うするためには、慎重さだけでなく大胆な行動も必要だ」

ミカドは独り言のように言った。

いつの間にか庭に向かって座る彼の膝には、見たことのない白い猫が気持ちよさそうに寝ていた。

昔使われていた道を頼りに、山道を登る。

木々が覆い茂っているため、道中は困難を極めた。

この山は周辺でも一番高い。

ヨウはしたたる汗を拭いながら、ひたすら頂上を目指した。

足が鉛のように重く感じられた頃、空が開け、広い場所に出た。

頂上だ。

ヨウはその場で大の字になり、空を仰いだ。

雲一つない青空。

このまま行けば、今夜は満月が美しく見えるだろう。

ヨウは自然と空へ手を伸ばした。

そのとき、懐から白いものが零れ落ちた。

擦り切れ、そこら中に手垢がついているが、どうやら元は高級な紙で書かれた手紙らしい。

ヨウは慌てて、その手紙を拾い、懐に入れる前に広げた。

そこに書かれているのは、流麗な文字で、三行だけ。

『月と太陽は永遠に交わらないと思っていた。だからヨウ(陽)という名前にしたのよ。月からあなたの幸せを祈っているわ。』

ヨウは読み終わると、それを強く抱きしめた。

山の頂上、この辺りでは一番月に近い場所で、彼は今日も満月を待つ。

(終)

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