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【15】かぐや姫の憂うつ (短編小説)

15:揺れる心

かぐやが目を覚ました時、太陽はすでに天高く昇っていた。

ハクが置き土産に残した『試してみればいいのに』という言葉が頭から離れず、朝方になってから眠ったのだ。

起き上がり文机に置いたままになっているミカドからの手紙を見て、かぐやは決意を固めた。

「帝に会われる、ですって…?」

「ええ」

身支度を整えたかぐやは、驚くヨウには目もくれず筆を動かしていた。

「でも、おトウ様たちには知らせたくないの。内密にお願いね」

「では、あの、帝と…」

書き終わったかぐやは、手紙をヨウに渡した。

「ヨウ。お前には世話になったわ」

「…姫様」

「今回が、あの人と会う最後になるでしょう」

正直、自信はなかった。

しかし、不安を口にするとさらに不安になりそうだった。

こんな気持ちになるのは、月から地球へ向かう時以来だろう。

使命が果たせないかもしれない不安、恐怖。

そうした黒い波に飲み込まれそうだった。

月人は感情が希薄だと言われているが、不安や恐怖は感情ではなく、思考の産物なのかもしれない。

ヨウはかぐやの不安を感じ取ったのか、黙ったままじっと彼女を見つめた。

それから、おもむろに手紙を持つ彼女の手を、両手で優しく包んだ。

「ずっとお傍にいます」

その目は、彼の手以上に優しかった。

かぐやは自分の心臓が止まったかと思った。

「どんなことがあっても」

そう言うと、ヨウは手紙を持って部屋を出て行った。

「どんなことが、あっても」

かぐやはヨウの言葉を繰り返した。

まるで、自分自身に染み込ませるように。

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