【2】かぐや姫の憂うつ (短編小説)
2:かぐや姫の任務
目が覚めたとき、M-10009は人間の手の中にいた。
人間は、M-10009を手のひらに収められるほど大きい。
M-10009は身体をあえて小さくしていたのだが、それは目の前にいるニンゲンが自分を見つけるまでタケの中で待機するためだ。
竹を取って生活するこの人間が、地球におけるM-10009のヨウイクシャになることは、事前調査の段階で決まっていた。
M-10009はすぐにこのニンゲンの住居に連れ帰られ、「かぐや」と名付けられた。
*
数日後。
かぐやはタケで作られた箱よりも丸いカゴというものに、柔らかい布を幾重にも巻かれて入れられていた。
これだけしっかり巻かれたら、身動きが取れない。
仕方がないので、かぐやは目の前で自分の世話をするニンゲンを観察することにした。
ニンゲンは全身から水を搾り取られたような外見をしていた。
骨と皮だけで出来ていると言っても差し支えないだろう。
こうした容貌のニンゲンをここではロウジンと呼ぶらしい。
月に住まう者(月人)とニンゲンはよく似ているが、月人は全員、人間で言う十〜二十代ぐらいの外見をしているため、かぐやにとってロウジンという存在は新鮮だった。
かぐやは隣にいるもう一人のニンゲンに視線を移した。
二人はよく似ているが、体の細かな作りが異なっている。
その違いはセイベツに由来し、それぞれの特徴を有する個体をオトコ、オンナと呼び分けているのだと月で学んだ。
ニンゲンはある一定の年齢に達すると、オトコとオンナで契りを結びフウフになるのだという。
フウフの多くはコドモを作るが、まれにこの二人のようにコドモのいないフウフもいた。
*
このフウフのコドモとして暮らし、ニンゲンのオトコだけが持つというセイシを持ち帰る。
これがかぐやの任務だった。
月にはオトコが存在しない。いるのはオンナだけ。
オンナだけで子孫を残すことは、月人でも無理である。
月人が生存し続けるためには定期的に外部からセイシを持ち込む必要があり、その重要な仕事を任されたのがかぐやだった。
今回の任務遂行の如何が月人の生存を決める。
かぐやは心の中で「早く大きくならなきゃ」と呟いた。
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