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【16】かぐや姫の憂うつ (短編小説)

16:告白

その日の夜。

真っ暗な闇に三日月がかかっている。

ヨウとともにこっそり部屋を出たかぐやは、月の宮に向かった。

人に見つからないよう、灯は持っていない。

月の宮に着くと、すでに先客がいた。

人影は二つ。

月の宮に一つだけ灯された明かりが、人影をおぼろに照らす。

「突然お呼び立てしてしまい、申し訳ありません」

かぐやが謝ると、ミカドは明るく笑った。

「いや。なかなか楽しかったぞ。誰にも見つからぬよう、花愛君とともに御殿を抜け出すなんて、子どもの時以来だ」

その楽しそうな口ぶりにヨウは安堵した。

それから急いでかぐやを月の宮に案内した。

ヨウと花愛君は周辺で見張りをする予定だ。

ヨウが最後にかぐやを見たとき、一瞬、彼女と視線が合った気がした。

最初に口を開いたのはミカドの方だった。

「会いたい、と手紙をもらえて嬉しかった。私ももう一度、そなたと話したいと思っていた」

「光栄に存じます」

「そう固くなるな。そなたには、会った時から親しみのようなものを感じていた。同志を得たような」

かぐやは扇子で顔を隠していたが、その隙間からミカドの顔を見ることができた。

小さな明かりに照らされた彼の表情は、以前ここで会ったときよりも柔らかい。

かぐやはその変化に驚いた。

最初に感じていた恐怖も彼女の中から消えていた。

「それで、話したいこととは?」

かぐやが黙っていると、ミカドが「では、私から」と話し出した。

「私は、そなたを側室にしたいと思っている。どうだ、驚いたか?」

「いいえ」

ミカドの率直な物言いに、かぐやも率直に返した。

「側室になれば、そなたも、そなたの家族も今以上の安泰と権力を得られる」

「同時に、その権力を求める争いに巻き込まれますね」

「そうだ」

ミカドは明かりの向こう側からかぐやを見つめ、彼女も彼を見つめた。

「私は、人間ではありません」

「ほう。では、鬼か神か」

「人間から見れば、神のようなものでしょうか」

「どういうことだ」

ミカドは楽しげだが、視線はかぐやから外さない。

かぐやは扇子を下ろし、真正面から彼に向き合った。

「私は月からやって来ました。人間の子どもを宿すために。それが、私の使命。陛下が、同志のようだと思ってくださったのは、私たちには背負うものがあるからでしょう」

今度はミカドが黙る番だった。

「もうすぐ、私は月に帰らなければいけません。それゆえヘイカのお申し出を受けることはできないのです」

長い沈黙が二人を包んだ。

その間ミカドは難しい表情のまま考え込んでいた。

「ヘイカを困惑させてしまい、申し訳ありません。私の話を信じるも信じないも、ヘイカ次第でございます。ただ、私はヘイカに嘘をついていないとだけ、申し上げておきましょう。私はあなたの使命を邪魔したくはありません」

かぐやは立ち上がった。

同時に、近くの草むらが動く。

ヨウがそこに隠れていたのだ。

「待て」

ミカドの声にかぐやとヨウが動きを止めた。

「それが本当だとして、そなたはもうすでに子を宿しているのか」

「いいえ」

「では、使命はまだ果たせていないのか」

「…はい」

ミカドはかぐやの後ろ姿に向かって言った。

「そなたは、それでいいのか」

その問いに答えることなく、かぐやはヨウとともに月の宮を後にした。

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