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きかせて

「ふさいで」設楽と栄のこばなし

『栄、いいニュースと悪いニュースどっちから聞きたい?』
「どっちも拒否、以上」
『じゃあいいニュースからだな』
「なんで?」
『熱海にスタバができたよ』
「どうでもいいニュースじゃねえか」
『俺としてはバッドニュースなんだけどね? 東京にいくらでもあるものは熱海にはいらないだろ。でも宗太はいつでもフラペチーノが飲めるから喜んでるらしいんだ』
「切るぞ」
『悪いニュースは、俺が栄に会えてなくて寂しいこと』
「そりゃよかった」
『話が噛み合わないな』
「出張にかこつけて野球でも観に行ってんだろってうらやましがられてんぞ」
『冗談じゃない、毎日毎日退屈な会議と顔合わせと接待だよ。円安だし』
「切るぞ」
『やさしいねえ』
「なにが」
『本当に切る気だったらいちいち言わないだろ』
「言って切らないとまたかかってきそうでうざいんだよ」
『無視すればいいのに』
「業務連絡の時もあるだろ」
『ああ、そうだった。公私混同の関係って最高だね』
「黙ってろ」
『栄がしゃべっててくれるって?』
「そうじゃねえ、いいから黙ってろ」
「なに』
「すぐにわかるよーーほら」

「聞こえたか?」
『うん。熱海の、花火の音だ。電話越しでもわかる。どこで見てる?』
「奥んちのベランダ」
『奥さまは?』
「友達一家が誘いに来たからサンビーチまで行ってるよ」
『それで、栄がひとりでお留守番? なんだ、寂しいのは俺だけじゃなかったんだな』
「都合のいい脳みそしてんな」
『他人の都合に振り回されるのには飽きたからね。なんでも自分に都合よく考えるようにしてるんだ。こうして、栄が電話につき合ってくれることも』
「へえ」
『いま、笑ってるのかなって想像することも』
「黙れって。べらべらしゃべってる間に終わるぞ」
花火が上がる、海の向こうに聞かせてやるから。

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